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白雪姫のプレコップのレビュー・感想・評価

白雪姫(1937年製作の映画)
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究極のヴィランと楽しいSEが支える記念碑

ディズニースタジオの記念すべき長編一作目。童話を映画化した今作のストーリーは明らかに長編向きではなく、展開だけ追えばおそらく5〜10分の短編レベルで済む話だ。この物語を知っていた私は、この映画の86分という上映時間にビビった。そして、実際に見てみると本当に一つ一つのシーンが長すぎた。例えば、こびとたちが手を洗うだけで何分もかけているのはさすがにやりすぎ。中盤はこんな感じのところがあまりに多すぎて、諸々発達した現代に観るとさすがに飽きる。逆に最初と最後は端折りすぎで、王子様が何者なのかよくわからないという問題点もある。

しかし、第二次世界大戦前に公開され、ディズニー一作目であるという歴史的実績を考えなくとも本作は名作である。自分より美しい白雪姫を妬んで命を奪おうとする魔女は究極的に非道であり、それはお城の地下に人骨が大量に放置されているところなどでも上手く演出できている。

また、本作で多く描かれる鳥たちも印象的で、創世記に登場し、キリスト教上のシンボリックな鳥である白い鳩はもちろん、そこに対比して描かれるハゲタカ、青い小鳥などはこれ以降のディズニーのアイデンティティになっていった。

なにより素晴らしいのは音楽で、一度聴いたら耳を離れない「ハイホー」や「いつか王子様が」は映画史上に残る傑作である。それらの音楽と共に印象的なSEの表現は後の「ファンタジア」で直接的な目標とした視覚的楽しさと音響的楽しさの融合に大きく寄与している。

ちなみに、個人的に本作で好きなところは前述の動物表現と音響的なところのほかに「やたらカメラ目線な魔女」と「『ジミニークリケット!(なんてこった!)』と叫ぶこびとたち」である。

最低限のストーリー、登場人物でアニメーション史の金字塔を打ち立てた傑作。
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