みやもも

名探偵コナン 世紀末の魔術師のみやもものネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

「世紀末の魔術師」とは何とも洒落たタイトルであるが、最初の印象では本編を通して存在感を発揮する怪盗キッドがその呼び名を冠する人物かと感じる。
彼の盗みの技術はどこまでも美しく、盗まれた被害者や楽しむ野次馬は彼の技を魔術だと感じるから。
しかし、物語が進むにつれ、本作のキーアイテム「インペリアルイースターエッグ」を製作したキイチ・コーサカという一人の人物が浮かび上がる。
物語の真相へと繋がる地下室のパスコードが、「バルシェーニク・カンター ベガ」=「世紀末の魔術師」で開く瞬間はストーリー構成と演出の上手さに感嘆させられた。

圧巻は犯人とコナンが1対1で対峙するクライマックスだ。
スコーピオンこと浦思青蘭は銃口をコナンに向けるが、コナンは一切動じない。
放たれた凶弾は正確無比にコナンの右目を襲うが、彼の眼鏡はそれを跳ね返して見せる。阿笠博士に依頼して右目を防弾ガラスに改造してあったのだ。瞬間流れるお馴染みのメインテーマと共に、事件は解決に向かって行く。
右目を狙撃された怪盗キッドの片眼鏡からコナンがその対策を思いついたとしたら、名探偵と怪盗という相容れない2人の皮肉な迄に強い信頼関係が浮かび上がってくるのである。
ありとあらゆる技法によってファンの心を掴み続け、心を揺らす完成され尽くしたエンターテイメントは正に現代の魔術と呼ぶに相応しく、1999年に公開されたこの映画の作り手、青山剛昌及びこだま兼嗣監督こそ真の世紀末の魔術師なのだと思えてならない。
みやもも

みやもも