odyss

新・平家物語のodyssのレビュー・感想・評価

新・平家物語(1955年製作の映画)
3.5
BS録画にて。

『平家物語』といえば、祇園精舎の鐘の声・・・という始まりが有名ですが、平家の栄枯盛衰を描いた作品。
こちらの『新・平家』は吉川英治の原作で、長いスパンで同時代の流れを描いているそうです。主人公は若かりし日の平清盛(市川雷蔵)。

この映画版は、まだ公家から下賎の者と蔑まれていた武士階級がしだいに力をつけていく様子を描いています。
上皇と天皇の対立、それに仏教寺院などさまざまな勢力が加担したり対立したりして乱れていた12世紀。

苦労して海賊を平定したのに、上皇からは恩賞ひとつもらえない平忠盛(大矢市次郎)。
家に帰れば、若かりし頃に上皇のお手がついたことで宮廷人気取りの女房(木暮実千代)に苦労させられる。
その子である平清盛が、実力がないくせに威張っている公家に反発しつつ、自分の出生の悩みも抱えながら、時代を見るに敏な商人の協力も得て、しだいに頭角を現していく様子がメイン。

ただ、私は市川雷蔵という俳優はあまり好きではなく、そのせいもあって、この映画はむしろその父である平忠盛の苦労人ぶりがよく描かれていると思いました。
言うならば、会社では上役に威張られ、帰宅すれば贅沢をしたがる女房に苦労させられる中年サラリーマンといったところ。

時代は原作が戦後まもない時期に書かれたことを想起させます。
つまり古い価値観がすたれ、新しい世代が台頭する時代。

後半、僧兵との対決で盛り上がりますが、肝心のところが「うーん」で終わるのが、今日的価値観からすると惜しい。

女優にあまり魅力がないのも残念。木暮実千代は役柄からして仕方がありませんが、清盛と恋仲になる久我美子もなんかイマイチなんですよね。
odyss

odyss