ぱた

傷だらけの男たちのぱたのネタバレレビュー・内容・結末

傷だらけの男たち(2006年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

仄かにサスペンス香るヒューマンドラマ…?

どちらの気持ちで観たら良いのか悩む作品でした。こんなことを言うとちょっとアレなのですが、サスペンスで推したいのかドラマで推したいのか、どっち付かずなんですよね。

サスペンスの視点で観たら、辛うじて古畑系(最初から犯人がわかってる)の構成と思えば受け入れられなくもないんだけど、その割りには途中で急に「今までこいつが犯人だと思ってたでしょ、実は犯人じゃないよ」からの「いや、やっぱり犯人でした」となるのがね、無理しなくて良いのよと言う気持ちになっちゃいました。裏切りは丁寧に差し込まないと、ああ、焦っちゃったのね、不安になっちゃったのねと製作陣の事が頭を過って一歩引いちゃうんですよね。

それにヒューマンドラマとして観ると、復讐系という前提があるんだから、もうちょっと掘り下げてみても良かったのでは?なんて。悲劇に見舞われながらも、許し再起していく男と復讐に身を投じる男の対比もわかった、そこに行き着くまでの壮絶さもわかった、でも心理描写が淡白。そう、心理描写が淡白、それにつきる。だから、感情が動かされないんでしょうね。

ただ、スクツァンが養子だった事実が発覚してからのラウ(トニー・レオン)は凄かったです。ここから、急激に人間臭くなるんですよね。これまでは台詞による説明的な描写が主体だったのですが、ここからは台詞なんてあってないようなものに変わります。その代わりに視線?の中の感情が可視化されてて、ここで漸く観客の関心が動くんじゃないかなと思いました。

とは言え、ストーリー展開はちょっと粗が目立ちます。細々とした、これちょっと無理あるくない?という要素があるんですが、一つ挙げるなら、気管切開して挿管してるんだから目覚めてすぐのあの状態では喋れないだろ、です。スピーチカニューレまでリハビリが進んでないのにはっきり喋ってるのがすごい違和感でした。リアリティって大切ですね…。
ぱた

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