Yoko

エンター・ザ・ボイドのYokoのレビュー・感想・評価

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)
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東京でドラッグの運び屋をしている”オスカー”はストリッパーをしている妹”リンダ”と二人暮らし。
トリップしているさなか、バー「VOID」まで薬を持ってきてほしいという友人からの電話が鳴り…。

ゴースト・トリップ(酩酊と旅)・ムービー。
衝撃衝撃衝撃。
この映像と爆音テクノを体験してしまった今、冷静に点数化することはまず不可能。
人によっては『2001年宇宙の旅』と同程度のショックを与え得る。
三半規管が弱い自分にとっては相当頭をやられてしまったし、特に赤の明滅に対しては初めて画面から目をそらすことを強いられた。
レンタルショップでは今作が18禁扱いの作品だったが、子どもはもちろん、高齢者がこの映画見たら冗談抜きで失神しちゃうのではないか?
たいてい良い映画を観た後はPCなどの小さい画面ではなく映画のスクリーンでまた観たいという気持ちがわく(特に映像に力を入れてる作品)。
今作も冒頭まではそう思っていたのだけど、一通り観終えた後だともう気持ちがいっぱいいっぱいでそれどころではない。
3Dでもし観たら多分途中で帰るかもしれない…。

先日『TOKYO!』をちょうど観たばかりで、東京を題材にした外国人作家の想像力をいかんなく体験できたと思っていたのだが、今作はあまりに常軌を逸している。
ネオン街も赤やピンクといった暖色をかなり暗くした感じの色が多く、『ブレードランナー』で見られるような雨や青や白の雰囲気とは異なる、どちらかというとオランダの売春街といった印象のほうが強い。
たしかに現実の「東京」らしい部分が節々に、特に序盤のショッキングな事件の後やや落ち着いてからは「東京」のような部分を感じることが多い。
しかし、序盤の事件まで、そして終盤にかけては明らかに「東京」をモデルにした「TOKYO」であり、最後に至っては{「TOKYO」であったはずの何処か}に転生しまったようだ。
これもうホラー映画だよ。おそろしやおそろしや。

正直冗長な面もあるし、人物のフラッシュバックもちょっと下手だなと感じる点もある。
だけど、この映像を見せられたらもうそんな細かい点はどうでもよくなるような、有無を言わせない強いパワーを秘めていた。
それにしてもダフト・パンクが手掛けた畳みかける重厚感の音圧のおかげイメージが一転。
ギャスパー・ノエ、長編は寡作だけどいずれも体調を整えてからの鑑賞が必要ということを肝に銘じて…。
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