TaiRa

青空娘のTaiRaのレビュー・感想・評価

青空娘(1957年製作の映画)
5.0
元祖・朝ドラヒロインといった佇まいの若尾文子を愛でる傑作。

田舎で育った落し子の若尾文子が祖母の死を受け上京するも、継母たちに女中扱いされいびられるという継子いじめ譚。50年代日本で『灰かぶり姫』をやる物語だが、若尾文子に悲壮感は皆無で、根っから明るい。青空に挨拶するほど。まさに朝ドラ以前の朝ドラヒロインといった感じ。物語の構造的には、問題を抱えた一家に超人的な女性が介入して、父親を改心させるというもので、『メアリー・ポピンズ』と近い。この若尾文子は魔法使いを必要としないシンデレラであり、自分自身の決断で問題を解決して行く。その為に男たちは自ら従者となって働く。金持ち青年とのロマンスは最小限まで抑制され、「約束の靴」も仄めかしに留める。病床に伏す愚かな父親に宣告する若尾文子は天使的な存在。青空へのお別れにも悲壮感はない。映画のテンポは大変速く、台詞回しも速い。特にその速さを担保する存在として女中役のミヤコ蝶々は大きい。他の役者が速く喋っていると感じさせる中、ミヤコ蝶々はいつも通りという。カメラの動きも全編通して無駄がなく、画面内の人物配置、フレームの出入りなど、完璧に計算されている。卓球場面のカッティングの素早さや、ポップで漫画的なコンテもモダン。若尾文子の健康的な可憐さを引き立たせる衣装も素晴らしい。腹違いの弟にかける若尾文子の台詞「他人よ。でもとても仲の良い他人」とはつまり「理想的な家族」の事だと思う。
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