masayaan

早春のmasayaanのレビュー・感想・評価

早春(1956年製作の映画)
3.5
ありふれた題材、ありふれた筋書き。どのような作家なのか詳しくは存じ上げませぬが、おそらく、とても広い場所を目掛けて投げた一作なのではないかなと思いました。映画通のおじさんおばさんではなく、働き盛りの若者に、これは自分たちの物語だと思って見てもらえるような。娘を送り出す父ではなく、父や母になりつつあるハンパ者たちの物語として。

そのせいなのか、持続や反復は、比較的抑制されているように感じた。良くも悪くも、映画よりはドラマに寄せてある。魅惑の岸恵子もそれに拍車をかける。あるいは、『東京物語』で時計が演じた役を、今作ではなんと、さらに分かりやすくも汽車に演じさせている。広い場所に向けるからには、説明責任を果たす。

その生真面目な退屈さにいささか居心地が悪いが、しかし、やっぱり、小津なんだなあ。総じて悪いはずもなく。夫婦って大変。
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