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ジプシーの唄をきいたのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ジプシーの唄をきいた(1967年製作の映画)
2.5
[クズ男ボラ、どこへ行く] 50点

クストリッツァ以前に日本で公開された珍しい旧ユーゴスラビア映画。しかも、同国の主要ジャンルだったパルチザン映画でもない(パルチザン映画は何本か公開されている)。本作品の主人公はどうしようもないクズの男ボラである。教会で尼僧を恫喝し、隣人ミルタとは商売の縄張りを巡って喧嘩を始め、そこまでして得た金は全て賭け事に消えていく。テレビは二回質に出すという天丼展開。そんな彼とその周辺の日常生活を土着文化との摩擦などを交えて描いている。ボラやミルタはガチョウの羽毛を転売して稼いでいるのだが、小屋に雪のように集められた羽毛は、根無し草な生活を迫られるジプシー文化の象徴でも有り、他力で舞い上がって落下するしかないという他人を顧みないボラの"自由"な生き方にも重なる。ひたすら自分より弱い人間を殴りつけてるだけなこいつの生き方を"自由"とするのはいささか抵抗があるが。

英題が"I Even Met Happy Gypsies"なんだが、幸せそうなロマ人はだれもいなかったよ。それどころか、何度もコミュニティから離れようとして、ロマのコミュニティでしか生きていけないことを知る若いティサの存在が辛すぎて忘れられない。
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