ほおづき

少年は残酷な弓を射るのほおづきのレビュー・感想・評価

少年は残酷な弓を射る(2011年製作の映画)
4.0
望まれずに生まれてきた子供たちのことをもっと考えなきゃっていう映画。


表面的には母親を拒絶し続ける少年が青年に成長して猟奇的な犯罪を犯すまでを描く物語で、何を考えているか思考の読めない育児のイライラと恐怖を母親視点で描いた作品。

鑑賞前にイケメンサイコパスの映画って聞いていたけど、そんな単純な結論ではないだろうなとは思った。
それは、母親のポスターを凝視してたり最後父親と妹を○○する描写を見て、本当は母親が好きで父親と妹に嫉妬してたんじゃないかと思ったし、青年と母親が見た目も仕草も似ていてるような描写があったから、実は同族嫌悪もあったようにも思えたから。

もっと言えば、できちゃった結婚で望まれてない出産だった描写もあって、そもそも子供って大人が思う以上にそういうの敏感に感じ取るから、そこが根幹にあったのかもしれないが
そのうえで「あなたがいる前は幸せだった。あなたがいなければフランスに行きたい」みたいなことをハッキリ母親から言われてしまっていたので、そこから悲劇が始まったのだろうと思う。


自分も思い当たる節があるが、似ている者だからこそ、好きだからこそ、自分を理解しようとしくれる人に八つ当たりしてしまう感覚。
自分を理解してない嫌いな人間よりも
自分を理解しようとしてくれている好きな人に敵意をむき出しにしてしまう愛情の裏返しにも似た感覚。
そして憤った感情だけをぶつけているうちに、何に憎悪していたのかもわからくなる感情・・・

それがラストの
「分かってるつもりだったけど今はちがう」というセリフにもよく現れていたと思う。

彼の気持ち凄くよくわかる。
サイコパスでもソシオパスでもなく極度に独占欲の強い歪んだ愛情表現ゆえの
復讐・・・


そこまで考えて原題の『We Need to Talk About Kevin』
(わたしたちはケヴィンについて話し合わなければいけない。)の意味がわかった・・・
最初”わたしたち”というのはケヴィンの両親のことかと思っていたけど、そっかこれ”わたしたちみんな”のことを指してるのかもって・・・

邦題だとただのタイトルおしゃれ映画かと思っちゃうけど、こういう望まれずに生まれてきた不幸な子供たちのことをもっと話し合うべきなんだと、そういう映画なんだと思った。