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夜の鼓のyusukepacinoのレビュー・感想・評価

夜の鼓(1958年製作の映画)
3.5
参勤交代中に鼓打ち相手に妻に不義を働かれた武士。その噂が随分と広まり...。
近松門左衛門の『堀川波鼓』を原作に今井正監督が映画化。脚本は橋本忍と新藤兼人、主要キャストに三國連太郎、有馬稲子、森雅之という豪華な面々だが他の近松モノに比べるとあまり知られていない本作。
近松浄瑠璃を原作とした映画では篠田正浩監督の『心中天網島』や増村保造監督の『曽根崎心中』といった心中モノの傑作が生まれており、『女殺油地獄』も何度も映画化されている。あと、こちらは個人的にまだ未見だが『冥途の飛脚』を映像にした内田吐夢監督の『浪花の恋の物語』もよく知られる作品だ。
ところで本作は現代でいうところの所謂寝取られモノに値するのだろうか。これも現代風にいうと出張中に妻を寝取られ、帰って来るやそれが噂になっており、妻を問い質して吐かせ復讐する。ざっと直訳するとこんな感じだろう。実はそんな単純なものではなく女の情念が絡む。夫が家を長期間空けると妻は寂しさのあまりに身近な男性に身を寄せる。
怒り狂った三國連太郎に逃げ惑う森雅之。
その構図が見られただけで満足。
今回は最初普通だが豹変する金子信雄のお馴染みのキャラクターにお歯黒、眉無しでも美しい有馬稲子と若い三國もまた美しい。俳優陣はなかなかに良く、今井正監督の確かな手腕の光る作品だった。
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