MasaichiYaguchi

北のカナリアたちのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

北のカナリアたち(2012年製作の映画)
3.3
人は意識していないだけで、「宿題」を抱えて人生を歩んでいるのかもしれない。
湊かなえさんの「往復書簡」にある「二十年後の宿題」を「原案」とした映画化作品。
映画のクレジットが「原作」ではなく「原案」となっているのは、原作の骨子だけ活かして映画用に大幅に脚色しているからだと思う。
「原作と映画は別物」とよく言われるが、本作品を観て原作ファンはどう思うだろうか?
舞台を北海道の札文島に変え、その閉ざされた世界の中で濃密な人間ドラマが展開されていく。
教え子がおこした事件によって、元分校教師の川島はるが、20年前の「出来事」と教え子達と向き合っていく。
映画では、緑溢れる初夏を思わせる20年前と、雪と寒さで凍てつく現在とが交互に描かれていく。
主演の吉永小百合さんが、この20年間のギャップを、衣装や表情と仕草で変化をつけて演じ分けている。
私より年上とは思えない可憐さや、一瞬息を飲む美しさがあって流石だなと思う。
この吉永さんを座長とした本作では、今の日本映画界で活躍する若き俳優六人が登場する。
夫々がこの大先輩と絡むシーンがあり、思わず見入ってしまう。
この六人の中で特に、鈴木信人役の森山未來さんの終盤の演技には心を揺さぶられた。
この東映創立60周年記念作品には、「二十四の瞳」のような教師と生徒の間にあるような心温まる味わいや、現代劇の人間模様等の様々なエッセンスが盛り込まれている。
更に、本作を撮影した木村大作さんが映し出す、美しくて雄大な札文島の風景に心洗われる。
「二十年後の宿題」の答えは、ラストの方で明かされます。
当り前のように思われる「一言」。
時には真冬の寒さのような辛く困難なことにぶつかる人生、だからこそ、この「一言」が大切だと思います。