『胸に輝く星』(The Tin Star)1957
『ウィンチェスター銃’73』『グレン・ミラー物語』『テレマークの要塞』のアンソニー・マン監督作品。監督生活の前半は当時ハリウッドで人気を博した西部劇をたくさん作った。
美しい構図。移動撮影は少なくフィックスが多い。セリフは洗練されて無駄がない。
臨時シェリフ・ベン・オーウェンス(アンソニー・パーキンス)が街を預かっているところに賞金稼ぎモーグ・ヒックマン(ヘンリー・フォンダ)が指名手配犯の死体を馬に積んで現れる。
街のみんなは賞金稼ぎに冷たい。ホテルに行ったが満室だと断られる。少年キップと知り合ったモーグは町外れの一軒家に住む少年の家に向かいキップの母ノナに宿をこう。
母一人子一人の家にどこの誰かもわからない成人男性が来て止めてくれという。母親ノナは何の疑いも持たずキップと仲が良いモーグを泊める。なんだって顔がヘンリー・フォンダだからね。
モーグが仕留めた手配犯の親戚ボガータスが街の中で大きい顔をしている。演じるのはネビル・ブランド。字幕版なのに渡辺猛さんの声で聞こえてくる。
ボガータスは自分自身が保安官になりたがっている。ヒョロヒョロしたベンに難癖をつけて取って代わろうとしている。こいつはジャイアンの役回り。
すると臨時シェリフ・ベンはのび太でモーグはドラえもんだ。しかしヘンリー・フォンダとアンソニー・パーキンスはどちらかというと擬似的な父と子の関係に見える。
妻と子供を失った過去を持つモーグは擬似的な息子ベンを導き擬似的な妻ノナと子供キップを守るために闘う。
ヘンリー・フォンダが西部劇で繰り返し演じた英雄だ。
悪人兄弟の一人が若き日のリー・バン・クリーフ。精悍な顔つきをしている。
悪人兄弟を裁判にかけずに死刑をしようとするボガータスと街の人々との対決がクライマックス。法と正規VS群集心理。
トランプに煽動されて大統領選挙の結果を受け入れず国会議事堂を襲撃した人々を思い出す。
たまたま今日はドナルド・トランプが起訴された日。今でもボガータスやトランプのような煽動家が法を曲げようとする。しかし何度挑戦を受けても法律は無法に立ち向かうしなり強さ(レジリエンス)がある。この映画もその強さを育んでいる。