虎子

楽しき人生の虎子のレビュー・感想・評価

楽しき人生(2007年製作の映画)
3.5
ここのところ感想を書くのが億劫になっていた。
というのも、映画は素晴らしいけど、それを伝えようとすればネタバレになるし、かといってまじめに感想を書いても良さがまるっと伝わる訳でもない。
で感想を書く意味はなんだ? 友達が映画に興味を持ってくれたらなと思いながら書いてるけど、そんなの観たいもの観ればいいし…。と袋小路に入ってしまっていて。一度初心に立ち返ることにした。

私が感想を書くのは、文章を書くことが好きで、観たものを誰かに伝えようとすることで構成や表現の助けになるからだ。そして友達という仮想の相手を設定して、相手の心に届けばいいと思いながら書いている。

さて本題に戻ろう。チャン・グンソクがパッケージにデンとのっているこの映画、実は主役は彼の父親のバンド仲間だったおっさんたちだ。
あらすじはYouTubeで予告編見てもらうとして、彼らの昔のバンド名は活火山。昔はイケてたと言ってたけど、たぶん当時もイケてないし今もイケてない。
1人はリストラで教師の妻からお小遣いもらってぶらつく日々。
もう1人もリストラで、妻は復職を期待しているが、掛け持ちの仕事でどうにか繋いでいる日々。
1人は子供の留学に妻が付き添う逆単身赴任の寂しい日々。
当時の韓国の世相が落とし込まれているのだろう。
誰だって大人になってつまづいた時、ふと思う。
「自分だって夢があった。輝いていた時代があった」

その夢に向き合ったとき、1人のおっさんは無我夢中で輝きを取り戻そうとしたし、1人は拒絶して、1人は妻と子供がいる自分は幸せだと誤魔化した。

ネタバレはここまでにして、何事も、停滞した気分を打破するために最初の頃の気持ちを思い出すことで新しい風穴を開けられるのかもしれない。
でも風穴を開けても、吹き込んだ風に乗って高く飛び上がってみなければ変化は起きないのだろう。風はきっと冷たく、鋭く切りつけるだろう。
私にその勇気はあるか。
虎子

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