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この自由な世界でのhorryのレビュー・感想・評価

この自由な世界で(2007年製作の映画)
4.0
『家族を想うとき』を見に行くので、予習。

ミドルクラス(とはいえないくらいか。父親に働き続けても金がない暮らしはイヤだと言っていた)のシングルマザー、離婚して子どもを親に預け、税金の滞納に苦しみながら働く。
移民に仕事を斡旋する職場でセクハラにあい解雇される。ならば、とシェアメイトの女性と二人で立ち上げた会社。これまでのノウハウを活かし、移民に日雇い(時給)の仕事を斡旋し、順調に儲けは出るのだが……

弱者が弱者を踏みつけることでしか、のし上がれない「自由な世界」。資本主義経済のなか強者の位置を手に入れようとすれば、元々、手元に何もない人間の資本は弱者という労働力だ。
主人公が起こしたのは人材派遣会社。移民への仕事斡旋をメインにしており、からに利ざやを増やそうとすれば、もっとも弱い立場である不法移民を雇うことになる。

国に帰れば政治犯として収監されてしまうイラン人家族を、自分の部屋に連れてきて温かい食事を提供した主人公が、利益のために、彼らを移民局に通報する。
この醜悪さにうんざりするが、私たちの社会も同じような醜悪さを持っている。

踏みつけられていい人などいない。しかし、英国の選挙結果は労働党に背を向けた。社会的公正がワーキングクラスにすら支持されていない「自由な世界」は、一体、何から自由だというのだろう。
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