TaroSonoda

カイロの紫のバラのTaroSonodaのレビュー・感想・評価

カイロの紫のバラ(1985年製作の映画)
5.0
なぜ自分が映画が好きであるのか今一度教えてくれる作品でした。是非見てください!
ウディ・アレンの作品は個人的に好き嫌いが大きく分かれるのですが、これは彼の作品の中で1番好きな作品になりました。いや、自分の中でも生涯ベスト級の大切な映画となりました。

映画は85分とかなり尺が短く、タッチも明るいので、とても見やすい作品です。
ストーリー自体は、現実(しかもかなり辛い)に嫌気が差し、一時的にでも抜け出すべく映画館に逃げ込んでいたミア・ファロー扮する主人公が映画を観ていたところ、スクリーンからその作品の端役が飛び出してきて、恋に落ちるという筋書きです。
もうこの設定自体が映画好きには堪らないと思います。

ウディ・アレンらしいウィットに富んだ台詞回しとオフビートなお笑いの連発で、幸福な時間が短い尺ながら流れていきます。

ファッションや美術も工夫されており、1930年代の不景気ながら、微妙に20年代の華やかな文化が残っていることを感じさせています。

登場人物も皆んな愛すべきメンバーであり、特にジェフ・ダニエルズはベストアクトではないでしょうか。その他の「カイロの紫のバラ」のメンバーも絶妙な‘B級感’を演技しており、非常に素晴らしかったです。

そして、何より素晴らしいのはラストシーンです。
主人公は再び映画館へ向かいます。セリフが一切ないシーンですが、このラストシーンのために今までの物語があったのだと言っても過言ではないと思います。

映画の世界に現実逃避してしまうことは、あまり良くないことだし、現実をしっかり直視して頑張っていかないといけないです。これは変わらぬ事実です。
しかし、この映画はそこから大逆転を見せ、「それでも映画は素晴らしい娯楽であり、人々を現実世界から夢の世界に連れてってくれる。だからこそ人々を魅了し、観た後では辛い現実が少しだけ明るく見えるんだよ」と優しく教えてくれます。
とても可愛くて、爆笑の嵐で尺も短いですが、余韻は凄まじいものがあります。

たしかに、自分自身も映画に救われてきたと思います。
中学校の生徒会選挙で落選した時に観た「バックトゥザフューチャー」、大学受験の酷いスランプ時に観た「グラディエーター」、可能性は無いと知りつつ大好だった女の子に告って見事に振られた時に観た「ジャージーボーイズ」、就活・公務員試験でかなりしんどかった時に観た「ズートピア」、付き合ってた彼女に別れを告げられた時に観た「オデッセイ」…
などなどと思い返せば色々な思い出は映画と共にあり、その都度スグに立ち直ることができました。

最後は私的すぎる内容となって恐縮ですが(ブログでやれですね笑)、なぜ映画を観るのか、なぜそれが好きなのかよく分かる大切な一本となりました。

アニーホールと並ぶとウディ・アレンの最高傑作です!素晴らしいです!!ありがとう!!!
TaroSonoda

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