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シャインのpandaのネタバレレビュー・内容・結末

シャイン(1996年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ピアニスト デビッド・ヘルフゴットの半生。

音楽家の映画で演奏場面に違和感があると残念な印象だが、役者さんも違和感なく、演奏の音源もご本人演奏だったとのこと、すばらしい。

それにしても…
この映画だけ見ると、デビッドの精神的な不安定は父親の偏った愛情が原因ではないかと思えてくる。父親の威圧感がすごく、とても人の意見を聞きそうにない雰囲気がいっぱいなのだ。そして、デビッドはずっと父親の言葉に縛られる。

一方、父親が、自分の好きなラフマニノフの曲の演奏を教えるには自分では力量不足と悟って、息子にピアノを習わせる場面がある。息子によい教育を受けさせたいという親心を感じる。コンクール受賞の新聞記事を大切に切り抜いて保管しているところにも、愛情を感じる。デビッドの心の不安定さに、もし、気づいていたのなら、何か人より秀でたものを伸ばしてやりたいと思ったのだろうか?…

そして、父親がデビッドの精神的な不安定に感づいていたから、親がそばにいてやりたくて留学を反対した気持ちもあったのか?と思いたくもなる。

母親がもっと愛情をかけてやることは出来なかったのだろうか?母親も旦那さんに威圧されて、なにも言えなかったような雰囲気の家庭だと表現されている。

そんな中で、デビッドにとって人との出会いが救われたと思う。
もう一人の母のような存在になってデビッドを温かく応援するキャサリン、尊敬できる恩師、結婚したギリアンなど。

精神病院での年月を乗り越えて、ピアニストとして舞台に立つ姿。舞台に立つだけが人生でもないけれど、楽しそうに演奏する姿は、ピアノが好きなんだと伝わる。
映画前半の、コンクールの為に修行のように取りつかれたような演奏は、見ていて辛かったが、対照的に、のびのびと演奏している姿だ。基本が身についているからこその、「技術と魂が絶妙に溶け合う演奏」だと思う。

もっともっとこのピアニストについて知りたくなるし、演奏も聴きたくなった。映画『デイヴィッドとギリアン響きあうふたり/ピアニスト、デヴィッド・ヘルフゴット』も、観たいものだ。

以上は映画を観ての感想なのだが、
ストーリーについて少し調べると、映画の内容が事実と違う点があったようで、映画の内容に対して家族から抗議されていたらしい。事実が、デビッドにとって家族や父親の愛を感じていたのなら、それが一番嬉しいことで、よかったと思える。

父親像について、事実と違うならストーリーもう少しなんとかならなかったのか、という思いがあるので、評価は少し減点した。


♪演奏場面について

コンクール場面のラフマニノフ『ピアノ協奏曲第3番』は、ピアノの旋律が際立つ音量で、まさに、演奏している主人公の精神状態を感じられる臨場感があった。個人的にラフマニノフが好きなので映画の中で聞くことができるのは嬉しい。

退院後ふらっと弾きに来たレストランのようなバーのような場所での演奏『熊蜂の飛行』が何度も聴きたくなる名演奏だった。型にはまった演奏でなくて、ところどころ力の抜き加減が絶妙な、本当に熊蜂が自由気ままに飛んでいるような演奏だった。映画を観た後、ネットでアカデミー賞授賞式の際の演奏の動画も観ることができたが、生演奏だと緊張されていたのだと思う、演奏としては映画の録音が私は好きだ。

📖追記ーーーーー
あくまでも参考までに、ウィキペディアによると
『演奏はヘルフゴット自身が行なっており、手のみのシーンは本人のもの』
と記載あり。(2020/9/9時点)

💿映画のオリジナル・サウンドトラックについて。
映画を見た翌日、レンタル店で『クラシック全曲版』の方を見つけました。他のバージョンもあるようですが、こちらのバージョンには残念ながら、本人演奏の収録は入っていませんでした。

残念に思いましたが映画の余韻に浸るために借りてきました。
買うならご本人の💿演奏CDがいいかな、と思案中です。




ジェフリー・ラッシュの演技力は素晴らしかったし、事実と違う部分があったとしても、一人のピアニストの存在を世界に発信できたことは、映画として意味があったと思う。

見てよかった。満足。


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BS【2020/8/4】放送録画
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