SANKOU

ダークナイト ライジングのSANKOUのレビュー・感想・評価

ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)
4.2
希望という光を奪われた時、人は一番の絶望を感じる。解放するという名目で、またもや市民に破滅の道を選択させる最大の悪の権化ベインがゴッサムシティーに姿を表した。前作のジョーカーも悪の化身のような存在だったが、彼が悪に染まっていった過程のはっきりした、内面の分かりやすいキャラクターだったのに対して、地獄で生まれたというベインは素顔がベールに包まれていて、一切の感情移入を拒絶させる悪の概念をそのまま纏ったような存在だった。とにかく圧倒的な力の前になすすべもなく崩れ落ちるバットマンの姿が痛々しかった。「人が堕ちるのは這い上がるためだ」という一作目で何度も耳にした言葉が思い出されるが、シリーズ中で最も過酷な作品だと思った。徐々に明らかになっていく敵の本当の姿に、再び立ち上がるバットマンの姿に心を動かされる。罪のない市民というが、果たして本当に罪のない市民はいるのか。悪と正義というお互いに紙一重で決して相容れない概念、何が正しいのか何が間違っているのか、人の生きている世界は簡単に色分けできずとても複雑だ。ただのエンタメ作品ではなく、色々と考えさせられる作品であり、ダークナイトトリロジーとしては最後に上手くまとまっていたと思う。
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