紅蓮亭血飛沫

キラー・エリートの紅蓮亭血飛沫のネタバレレビュー・内容・結末

キラー・エリート(2011年製作の映画)
1.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は、実話?を元にした小説・The Feather Menを原作とした映画とのこと。
そのため、作品を構築する“イギリスの特殊部隊・SAS”や“SASを保護する組織・フェザーメン”といった団体と戦う羽目になる殺し屋の物語に軸を置いています。
この手の“実話を元にした”映画は、所謂ノンフィクション映画とでも言いましょうか。
それって結局どこからどこまでが真実なの?、という当然の疑問が湧いてくるわけですが、本作でも同様に真相が何なのか分からず仕舞い。
そのため、見終えた後の余韻を心地よいと感じるか、モヤモヤすると憤るかの二択になると思います。

実際このThe Feather Menという小説が発行された際、社会にとっても多大な論争のタネとなり、政府に対して市民から真実か否かを追求する声が多く表れた…という事実があるそうです。
その上で政府はこの小説の内容を“否定”しているのですが、政府だからこそこのような事が真実だとしても公にするわけがありませんよね。
だからこそ、これは実話を元にした映画ですよ、と言われてもそれは著者が描いたただの夢物語なのか、事実を記載した伝記小説なのかがはっきりしない、“真相が曖昧な歴史”をベースにして展開されても何とも反応に困る…。
真相は分からないからこそ、この手の物語を信じるか信じないかはあなた次第…といった都市伝説めいた実話物語は嫌いではないのですが、それを映画といった映像作品として世に出すとなると、これまた好き嫌いが大きく分かれるのではないかと思います。

ジェイソン・ステイサム、ロバート・デ・ニーロ、クライブ・オーウェンで固められたキャスティングは、この手のアクション映画好きからすれば感涙物の並びですね。
カーチェイスやタイマン勝負等、アクション面ではなかなか見応えがあったのも嬉しいです。
特にステイサムとオーウェンの病院内の戦闘で、相手の目に指を突っ込んだり股間を狙ったりと容赦のなさがはっきり見えて、ステイサムお得意のそこら辺にある器具や武器は何でも駆使しようとするスタイルも健在。
椅子に縛られている状態で跳ねたり飛び降りたりする様は、見ていてかなり愉快で、本作でも特に印象深いシーンですね。
しかし、ロバート・デ・ニーロは結構動きが遅く見えたり、そもそもこの三人が一堂に集うのもラスト近くの数分…と若干肩透かしの気分。
最終的にこの三人による派手な死闘が展開されるのでは、と期待していただけに残念…。

実話を元にした…かどうかは分かりませんが、その小説を題材にしたとだけあって本作の要はアクション面よりもストーリー構成です。
政府の隠された闇と、その企みに惑わされた殺し屋による死闘が展開される事となります。
全編通して、殺し屋によるあの手この手を駆使した殺しの手段(風呂場で滑って死んだように見せかけるため、風呂場のタイルを使った武器を使う等)はメリハリが付いていましたし、そこにアクションを盛り上げる派手な描写の徹底が合わさっていい画が撮れてたかと。
ただ、兵士の中に普通に入り込むだとかトラックをリモコンで操作するとか、少々リアリティに欠ける描写・展開も同様に目立っていたのが気になりますね。
実話を元にした、というのなら尚の事このような“現実味”が真っ先に疑われるようなものなので、殺しの手段という点に疑問を抱くような感情が出てくるのはどうなのでしょうか…。

政府の掌で踊らされていた殺し屋達、その果てに憎しみ合う羽目となる彼らが最後に取る行動は…。

アクション面は安定して見る事が出来ましたが、ストーリー面の少々いい加減な展開や、ノンフィクション映画として見ていい物か悩む不明瞭な真実等々、良くも悪くも安定していない、個々の判断に全てが委ねられたような映画でした。