【第41回アカデミー賞 主演男優賞受賞】
『野のユリ』ラルフ・ネルソン監督がダニエル・キイスによる同名ベストセラー小説を映画化した作品。アカデミー賞では知的障がい者を演じたクリフ・ロバートソンが主演男優賞を受賞した。
誰もがタイトルは聞いたことがあるであろう小説の映画版。知的障がいのあるチャーリーを演じたクリフ・ロバートソンの演技は素晴らしい。手術前と後で全く異なる人物にみえるその表現力。そりゃ主演男優賞受賞するわ。
一方でラルフ・ネルソン監督はかなり変わった見せ方をしている。画面を分割したり挿入したりと実験的な手法をとっている。ネルソン監督の作品はこれが初見なのでどういう作風なのかがよく分からないが、少なくともこの映画の趣旨からすると少し邪魔に思えた。
問題作なのは間違いなく、知的障がい者の脳をいじって「健常」にすることが果たしていいことなのかという問いを投げかけている。障がい者にとってそれはむしろ残酷なことなのではないか。そもそも「普通」とは何だろう。そんな今にも通じる問題意識が通底している。
実験的な手法はこの映画には合っていないと思ったが、今にも通じる普遍的な問題を扱った作品として見応えがある映画だった。ちなみにクリフ・ロバートソンはオスカーを受賞したものの、この映画以来パッとしなかったという。『スパイダーマン』のベンおじさんとしてかろうじて知られるくらい。俳優業というのはつくづく不思議なものだなぁ。