鑑賞記録。
マルグリット・デュラス。
劇と、ナレーションによる会話の不整合。
それをピアノ劇伴で絡めた作品。
作品内では一貫してある事件の掘り下げが行われるが、先述のナレーションによる会話も詩的且つ観念的、或いは余りに冗長曖昧で具体的説明も僅少な為、その事件概要までもが如何様にも推察出来る。
実験要素の強い作品であるが、有閑階級の退廃的な気怠さやインドの暑熱で弛緩した空気が表現されており、更に作中狂女や現地民を一切映さない事、気候や環境への不平不満ばかりの会話から、これ等特権階級の優越感へのアンチテーゼ、太宰の「トカトントン」を拾う事も出来る。
冒頭から登場している人物が誰であるのか判らず、中盤ナレーションに拠って漸く推察出来たりと構成も輻輳し、迂遠な会話で混迷させられもするが、監督の試みが非常に興味深い作品である。