Jeffrey

ボヴァリィ夫人のJeffreyのレビュー・感想・評価

ボヴァリィ夫人(1933年製作の映画)
3.0
「ボヴァリィ夫人」

本作は1934年にジャン・ルノワールが監督した妻が夫に幻滅し、情事や浪費にのめり込み破滅するまでを描いたギュスターヴ・フローベールの代表作を映画化した名作ドラマで、この度DVD 4枚組ボックスの1枚目として収録されていたのを初鑑賞したが面白い。当初は3時間を超える作品であったが、配給会社の意向で30分以上カットされたバージョンが現存するものであるとのことだ。また、フローベールのこの原作は本作の後、ビンセント・ミネリ、クロード・シャブロル、アレクサンドル・ソクーロフらによって映画化されているのは有名だろう。

さて、物語はまだ見ぬ新しい世界を夢見て街医者シャルル・ボヴァリィと結婚したエンマ。だが田舎での平凡な夫との結婚生活は彼女にとって退屈なものだった。そんな中、エンマは青年レオンに出会いお互い惹かれ合っていく…と簡単に説明するとこんな感じで、19世紀のフランスの田舎で結婚生活をして夢と欲望に駆り立てられた末に自殺した女性を描いたフロベールの有名な小説である。脚本は監督がしていて、セリフはフロベールのテクストに合わせていると思われる。1933年秋に小説の舞台であるノルマンディーを中心に野外シーンを撮影したらしく、19世紀の雰囲気を綿密に醸し出し、それに合わせて野外シーンはパリの撮影所で撮影されている模様。

オリジナル版は190分と言うかなり長い作品だが、配給によって短縮されて一般公開では約2時間程度のものである。今回そちらを鑑賞した。というか190分版って存在するのだろうか?原作は精密な客観描写と心理描写に含んだ多岐にわたる物語であるが、公開版ではその複雑な物語のつながりが犠牲になり、商業的には失敗してしまったのは有名な話だ。監督自身が後に演劇会の人たちと一緒に仕事をした作品だったと語るように、主役を演じたボヴァリィのテシエは当時劇団に所属しており、同じ劇団にいた監督の兄のピエール・ルノワールが夫のシャルルを演じるてる。よくも悪くも30年代の黄金時代のフランス映画の良作である。
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