えいがドゥロヴァウ

アンヴィル!夢を諦めきれない男たちのえいがドゥロヴァウのレビュー・感想・評価

4.0
劇場鑑賞時の転載



アップリンクXにて。

六本木ヒルズでこの作品を観るのもさぞかし気持ち良かっただろうけど、アップリンクの雰囲気も大好きなので、久しぶりに行けて楽しかった。

80年代のハードロック全盛期に、その革新的な演奏で数々の著名なバンドからの賞賛を受けていたハードロックバンド、アンヴィル。
実力は折り紙つきだった彼らだが、彼らはメガデスやメタリカなどのように、時代の波に乗ることは出来なかった。
既にバンドを結成して30年が経った現在、一度もヒットを飛ばすことのない彼らは、それでも夢を諦めずに、地道に活動を続けていた。

ドキュメンタリーの本分のひとつは、如何にその対象の様々な側面をさらけ出し、それでもなお、その魅力をしっかりと示せるかどうか、にあると思う。
その点において、このドキュメンタリー映画はすんばらしい。

結成メンバーのリップス(Vocal, Guitar)とロブ(Drums)を中心に、サエないヨーロッパツアー、旧知のプロデューサーとのアルバム製作、日本のLOUD PARKの出演を通じて、彼らの家族やバンドメンバー同士の関わり合いを追っていく。

リップス(ロブだったかな?)が、「こんなにいい音楽をやってるのに評価されないのは、レコード会社に俺らを売り込める有能なマネージャーがいないからだ」と語る場面がある。
実際にプロモーション力の不足は致命的だし、彼らが売れない大きな要因とはなっているはずだけど、現在の音楽シーンには明らかにそぐわない音楽をやっているというのも事実。
正論と独りよがりは紙一重だと感じる。
時代に迎合するか自分の主義を貫くかというのは、表現者にとっては普遍的な命題。
レコード会社に1度も所属せずにインディースでアルバムを出し続けてきた彼らは、恐らくこの葛藤自体を味わったことがないのだろう。
そこに彼らの純粋さと愚直さ、すなわち魅力があるように感じた。

普段は給食配給センターで働いて、たまにライブをするリップスに、とてつもない既視感が。
『レスラー』のランディ(ミッキー・ローク)と全く同じ境遇じゃないですか。

もうね、ボンデ―ジ着てバイブでギターを弾くような人たち(80年代当時)だけど、すんごく優しくていい人たちなの。
ハードロックだからといって敬遠する人がいたら、そのためにこの作品を観ないのは勿体なさすぎる。
彼らの人柄をしっかりと知ったあとの最後のライブシーンには、鳥肌と涙が噴き出すはず。
どっかライブ行きてぇ!!