いろどり

アギーレ/神の怒りのいろどりのレビュー・感想・評価

アギーレ/神の怒り(1972年製作の映画)
3.8
16世紀、インディオの言い伝えるエルドラド(黄金郷)を求めて未開のアマゾンを突き進むスペインの遠征隊。実話をもとにしたお話。

CGのない時代の過酷なロケ。
臨場感あるアマゾンの映像美は今作の見どころの一つ。

そしてあとはもうひたすら傲慢なスペイン人たち。
傲慢。
この映画はこれに尽きる。

占領して当然というスタンスのスペインという国のもと、インディオを奴隷化する遠征隊、特権を与えられて当たり前の顔をする貴族。

それぞれの立場による傲慢がジャングルの中でじめっとした存在感を出している。

そして傲慢の極致ともいえるアギーレ役クラウス・キンスキーの狂気がアマゾンに映える。この映画を見る人のほとんどが期待しているだろうキンスキーの狂気、今作ではバッチリ。
私は満足感があった。

彼の持つ爬虫類やバッファローのような動物的で不気味な猛々しさと生来のサイコパス的気質(私生活の犯罪行為、衝突の多い撮影現場etc)を惜しみなく発揮している。

終盤、筏の上でサルの群れの中に佇む姿は破滅的でゴージャス。
あまりの画力に言葉が出ない。
どうやって撮ったんだろう。
これでキンスキーが潔癖症だというのだから、恐るべし俳優魂と容赦ないヘルツォーク。

ヴェルナー・ヘルツォークとクラウス・キンスキーは初のタッグということだけど、お互いの内に秘めるどす黒い才能の共鳴を感じ取っただろうことは、のちの共演の多さからもよくわかる。

ヘルツォークは今作から10年後にまたキンスキー主演でアマゾン変態映画「フィツカラルド」を撮っている。今作はわりと短めで、「フィツカラルド」は3時間もある。アマゾンが舞台の今作でヘルツォークは満足できなかったのか、欲が育ったのか。

何にしても狂気じみた監督が狂気じみた俳優で実在の狂気じみたアギーレを撮った。そんな映画だった。
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