真魚八重子

けものの眠りの真魚八重子のレビュー・感想・評価

けものの眠り(1960年製作の映画)
4.0
これはとても好き。脚本は池田一朗。 ご存じ、その後『花の慶次』などの時代小説を書く隆慶一郎の、脚本家時代の仕事。わたしは隆慶一郎の小説も大好きで。

船で長い海外出張から帰ってきた芦田伸介。娘の吉行和子と、恋人で記者の長門裕之が出迎える。芦田の会社からの迎えは少なく、戻ったら嘱託となる話も立ち消えていた。そして、退職金の300万を持ったまま翌朝芦田は家から姿を消してしまう。
家には芦田からの指輪を預かっているという謎の電話が入り、長門たちが追うと、その関係者が服毒心中事件で死んでしまう。帰宅した芦田は新しい会社に入ったとイキイキしているが、細かいことを語ろうとはしない。その後も芦田の周りで殺人事件が起こり、長門は記者魂で芦田の周囲を探る。

「真面目に生きてきた人間が馬鹿をみる世界」というテーマが、もうやりきれない。それに初老になってようやく気づいてしまうことも。ラストも虚しい。
バーのホステスに話を聞いたりするときに、再現映像が背景でかぶったりするのが清順らしい。映像のお遊びはそんなにないけれど、ミステリーとしてガチャガチャしているのが面白い。
真魚八重子

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