そーた

アライバル-侵略者-のそーたのレビュー・感想・評価

アライバル-侵略者-(1996年製作の映画)
4.0
お手上げです。

映画はやはり脚本なんだ。

そう、思えてしまうのは、
どうしようもないくらい出来損なった映画を観た時か、
はたまた最高にスリリングな作品を観た時かのどちらかで、
今回は圧倒的に後者。

いまや、どうしようもないくらいの出来損ないに成り下がってしまったチャーリー・シーン作品の中で、
もしかしたら最高峰と呼べるほど、
彼の魅力が存分に詰まったこの作品。

地球温暖化をトンデモ解釈して、
それでいて何故だかあり得そうだと思えてしまう上質なB級SF作品。

失業した天文学者が暴こうとする、
人類にとっての知られざる衝撃の真実とは。

この映画、
SFでありながらサスペンス色が強く、
終始ハラハラしてしまうのが最大の面白さ。
この息もつかせぬ展開の肝となるのは、
さりげなく張られた伏線の数々。

温暖化というキーワード、
火星のテラフォーミングなど、
話が進むにつれてそれらが結び付いていって、
たとえそれらが荒唐無稽だと分かっていても見ていて非常に気持ちがよい。

そして、特に敵が用いる謎の球体の使い方がウマイ。

中盤ではただの不気味な便利グッズでしかないんだけれど、
ラストの見せ場では危機的状況を最大限に演出してみせる。

さりげない伏線の張られ方が、
この映画の脚本のうまさを物語っている端的な例だと思う。

でもこの映画の魅力はやはりチャーリー・シーンの存在感による所が非常に大きい。

作品の持つぞくっとする不気味な雰囲気とは対照的に、
どこか色っぽさの漂うちょいワルな彼が、
天文学者だというギャップも手伝ってか、
グイグイと僕達観客を引き付けて放さない。

だからこそ、
伏線が張られていることを気にすることなく、
明かされていく真実や、迫りくる危機的状況をタイムリーに楽しむことができる。

脚本と配役の絶妙なブレンドが生み出したこの良作。

まるであの謎めいた球体のごとく、
SFというジャンルがもつ一種独特な魅力の数々を、
こじんまりとした作品のなかに凄まじい勢いで吸い込んでいるかのような映画でした。

そして、
後口の悪いラストシーンの不穏な感じに、
僕はお手上げでした。

そう、
今やうらぶれたチャーリー・シーンの不穏な感じにも、
同じく僕はお手上げです。
そーた

そーた