TaiRa

呪怨のTaiRaのレビュー・感想・評価

呪怨(1999年製作の映画)
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初めて『呪怨』と名のつく作品をちゃんと観た。怖い。

オムニバスかと思いきや実は話が全部繋がってる!みたいなノリが90年代っぽい。順番含め構成は上手い。時系列的には一番古い柳ユーレイのエピソードを最初と最後に分割して持って来るのが特に。何だかんだ抑制は効いているし、俊雄くんが猫の声を発するという、あの荒唐無稽なアイディアも、一発目の見せ方はそれなりに気味悪く描けてる。ピントが合わない人物のキモさを意識的に用いており、回想場面で画面奥から近付いてくる伽椰子の不気味さも効果的。『女優霊』の笑う女から派生した表現方法を上手く踏襲してる。だからこその柳ユーレイ。最初のエピソードは割と正統派。

「事件後」に引っ越して来た一家とその関連人物が一人一人呪いに侵されていく中盤のエピソード群では、やはり娘のやつが怖い。遺体の説明を検視官から受ける刑事の場面からして禍々しい。説明される内容は悲惨極まりないが画面では一切何も見せない、という演出はおそらく『エクソシスト3』から持って来てる。母親の電話中に「娘」が帰って来る一連の場面もショットの積み方が良い。溜めと時間の使い方、ショックを受けるリアクションのクオリティがどれも良い。階段を上る「それ」を娘と思えず「…誰!?」と聞く母親の台詞も良い。あの一家の兄で栗山千明が探す彼氏は、今作では失踪扱いになってるけど、『呪怨』のパイロット版『4444444444』(『学校の怪談G』収録)で顛末が描かれてる。この時点から『呪怨』が永遠に終わらない連鎖を描くシリーズなのが明示されてる。致死率100%の呪いが延々と連鎖する恐怖。あと屋根裏を照らすのがライターというのも今となっては良い。携帯やスマホのライトではなく火。見てはいけないものを照らしてしまう人々、禁忌に触れてしまった人々が恐怖に襲われるのを見つめるジャンルがホラー。

呪いの前にまず人の狂気があるのもこの作品の良いところ。狂った人間が死ぬと、狂った幽霊になる。
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