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雪之丞変化 第一篇のパングロスのレビュー・感想・評価

雪之丞変化 第一篇(1935年製作の映画)
3.1
◎歌舞伎役者林長二郎 トーキー初期セット時代劇

1935年 松竹下加茂 総集編 モノクロ 101分
スタンダード *ホワイトノイズ、コマ飛び多し

たぶん再見だと思う。

林長二郎、後の長谷川一夫(1908-84)による最初の『雪之丞変化』の映画化。

前年の1934年から朝日新聞に連載されて人気を博していた三上於菟吉の同名小説を前篇(第一篇)、第二篇、解決篇に分けて、衣笠貞之助監督が映画化した。
現在残るのは1952年に編集された「総集編」のみらしいが、Filmarks には何故か、総集編が見当たらないので、便宜的に、第一篇、第二篇に感想を投稿する。

ただ、総集編の編集が杜撰なのか、その後の保存状態の問題なのか、フィルムのつなぎ部分でのコマ飛び、音飛びがかなり多く、必ずしも良い状態とは言えない。

しかし、これが、1935年という、まだまだサイレントが全盛で、トーキー初期の作品だという眼で観ると、撮影技術、俳優の演技、そして大がかりなセットの作り込みと、戦後1960年代頃の時代劇とほとんど遜色がないことに驚かされる。

かなり本格的に、中村座の外観、舞台と客席、楽屋裏や奈落までセットで再現した本格的な「歌舞伎映画」でもある。

林長二郎(長谷川一夫名義は1938年から)は、公開時27歳。
◯女方役者としての雪之丞、
◯雪之丞の母、
◯闇太郎、
の三役(いわば男性、女性、中性の三つのジェンダーでもある)を独りで演じ分けるが、どの役も本寸法で堂に入ったもので、歌舞伎役者としての彼の実力をうかがうことができる。

*1 「長谷川一夫」で検索
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

*2 映画史探訪 2011年11月3日
美剣士変化~永遠の二枚目・林長二郎(長谷川一夫)~
www5f.biglobe.ne.jp/~st_octopus/MOVIE/SILENT/29Chojiro.htm

実際に、雪之丞と師匠の菊之丞(六代目嵐徳三郎)が、舞台で歌舞伎を上演するシーンもかなり映されている。
『将門』の滝夜叉姫は分かるとして、化け猫のような化粧で、道成寺物の後ジテのような演技を見せていたのは何の演目だろうか?
中村座前の看板には「仮名手本忠臣蔵」とあって、その道成寺物的な場のあとに、「由良鬼ゃ、こちら、手の鳴る方へ」の七段目祇園一力の場に替わるという奇態な場面転換が行われていたが何だったんだろう?

長谷川一夫は、1963年に市川崑の監督で『雪之丞変化』を再映画化していて、そちらも観た。
その頃の長谷川は既に歌舞伎を離れて久しい映画人だし、トウが立ち過ぎている。
彼の本領を知るには、こちらの1935年版を観るべきであろう。

《参考》
*3 「雪之丞変化」で検索
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

*4 愛すべき時代劇の日々
雪之丞変化 松竹 林長二郎 衣笠貞之助 1935
2021-04-15 20:12:47
ameblo.jp/e-izarg/entry-12666715790.html

*5-1 【作品データベース】雪之丞変化
h www.shochiku.co.jp/cinema/database/01754/

*5-2 【作品データベース】雪之丞変化・第二篇
www.shochiku.co.jp/cinema/database/01779/

*6 第12回 京都ヒストリカ国際映画祭
『雪之丞変化』
historica-kyoto.com/2020/films/shochiku/a-trap-cellar/

《上映館公式ページ》
京都文化博物館
熱狂!チャンバラ・スターの時代 甦る伝説の六剣聖
2024.7.2(火) 〜 7.31(水)
https://www.bunpaku.or.jp/exhi_film_post/20240702-0731/
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