これはすごい。じわじわと立ち上がってくる何かがあり、それを言葉で形容できなかった。
ドイツの民話をフランス人監督がイギリス英語で撮るという、なんかスタートから変で、主人公の笛吹は絶妙にオーラがなくて、リラックスしている。弾き語る曲も現代的なフォークソングだ。
なんだかいろんなバランスが絶妙に変なのだが、映画は面白い。ほとんどのシーンがルーズショットの一連芝居で続く。クロースショットのカットバックは基本的にない。わりとアッサリとした撮り方だ。
特筆すべきが心理描写をしないところ。登場人物にとって嬉しい出来事やショッキングな出来事があっても、さらっとしている。人物がウジウジ悲しんだり、作り手がしつこく描写することがない。
淡々と描くからこそ、見せ場のシーンが生きてくるし、観客が主体的に画面を見ようとする。
これはどこか、ラモリスの『赤い風船』にも通ずるところがあるように思える。