三樹夫

インファナル・アフェアIII 終極無間の三樹夫のレビュー・感想・評価

3.6
ヤン、ウォン、サムと面白い人たちが全員いなくなって、一人取り残されたラウにすべての業が降りかかってくる最終作。原題タイトルの無間道が大きく意味を持ち、絶えることのない苦しみを受ける地獄においては生きることが最大の苦しみということが体現されたかのようなストーリーとなっており、完結編として綺麗な最終作になっているように思う。
面白い人たちがいなくなったものの、塩顔冷血メガネというまた違ったタイプの面白おじさんが出てきて、こいつマフィアの犬なんじゃないかとラウが精神的に追い詰められていく。ラウ自身がマフィアの犬だったが故に余計にパラノイアに陥る。1作目は誰が犬か判明した状態で身分がバレるかどうかというサスペンスだったが、今作では犬は誰だというサスペンスにラウのパラノイアが乗っかってくる。

2作目は1作目とうってかわってリリカルな映画だったが、今作ではハッタリが復活し、そんなわけないだろ庶務課のオフィス、煙シューシュー噴き出すポスト、監視カメラ越しに見つめ合うラウとヨンというように画にケレン味がある。しかし現在と過去のクロスカッティングで散漫な印象を持つ上に2作目に引き続きわりかしウェット目と、ケレン味が増えながらも1作目のソリッドな雰囲気とは異なっている。
派手なドンパチは無し、なんならできる限り発砲シーンを無くし役者同士の演技のやり取りで魅せたいというシリーズだったが、演出手法的には足し算演出なので、ウェットなシーンではここは明確に泣かせに入ってますというのが分かる。1作目はウェットもあるがテンションの高さを維持しつつのソリッド、2作目3作目はウェットというシリーズになったが、ウェットシーンも足し算的な演出のため、ウェットなシーンが始まるとどうしても物語の勢いの停滞感が出てしまう。1作目が勢いを持続して突っ走るという見せ方だった故に、ウェットシーンが始まると勢いの停滞をどうしても感じてしまう。
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