まつこ

今宵、フィッツジェラルド劇場でのまつこのレビュー・感想・評価

3.8
川を渡っても近いうちにきっと会える。彼女と再会するときがその合図なんだ。

時代の流れとともに閉館を余儀なくされたフィッツジェラルド劇場。愛され続けたラジオ番組の終了も決まり、今宵、最後の公開収録が始まる。

アルトマンの遺作となった本作は彼の「死に際の美学」が詰まっているように思えた。
〝老人の死は悲劇じゃない〟という言葉がアルトマン自身の死を予期させる。
旅立ちなんだから悲しまなくてもいいじゃない!近いうちに会えるじゃないか!と歌わせるところがまたニクい。

カントリーやフォーク調の音楽が心地よくて、お下品なあの歌詞もやんわりに感じられる不思議!
台本が見つからず、みんなで何とか乗り切るモノマネ大会のシーンも好き!

彼の描く群像劇がやっぱり好きだ。自然なんですよね。
視点というより空間で切り取っているよう。出てくる人みんなの人生が画から見えてくるのがすごい。

アルトマンから届けられた最期のメッセージのような本作。
シニカルさがやさしいのにも何処か納得できてしまう。

❁余談❁
もしもの時のために代行監督としてPTAが撮影に立ち会っていたそうです。
アルトマンの後継者と呼ばれたりする彼ですが、技術的な点はさておき、「人生は色んな人と交わりながら進んでいくんだ」って訴えかけながらもナチュラルなところが似ているなぁと個人的には思っています。
まつこ

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