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マンディンゴのペジオのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
4.2
描かれた時代、情欲の物語もそうだが、特にカメラワークや構図の面白さなどから、思い出したのは『白い肌の異常な夜』(あれの「階段落ち」も衝撃的だった。)
あれと同じく、その物語を描くにあたって「こう描くべき」という「正解」を観ている様な満足感を得た
本作ではその正解が「リアリズム」であり、同時に「残酷路線」でもあったのは、「現実が残酷だったから」という当たり前の見解故

現実をそのままお届けしているのは間違いないのだろうが、それが「当時の白人の目線」からの現実であるという点が、『それでも夜は明ける』等の類似映画との違いだろうか
仮に現実を「日常の連続」とするならば、「黒い肌」を巡る異常で醜悪な行為が善悪の議論の俎上にすら乗らない「当たり前」の事として描かれている事が画期的
目を背けているのではない…視界に入っていてもそれが間違っているなどとは露ほども思っていないのだ
彼らにとっての(あくまで彼らにとっての)「モラル」に反した者を罰するのに些かの逡巡も無いのが、現代の倫理観で鑑賞する僕たちにとっては異様な光景として映る…そこには残酷な歴史を知る為の教材的な価値と同時に、自分たちとは全く違う生き物の生態を眺める様な「見世物」としての価値も確かに存在していると思う(娯楽映画の巨匠リチャード・フライシャーがそこに意識的でなかった筈が無い。)

つまりは…バチクソ面白いという事なのだが…映画に「理想」を求める向きには耐え難いものではあるかもしれない
所詮僕も「他所の国の歴史」という「他人事」で観ているのだろう
だからこそ愉しめている訳で、当事者からすれば、観たくないものであるというのは理解できる
進歩する為には過ちを「ありのまま」に受け入れなければならないという視座に立てば、本作の映画史における価値もより高まるだろうか
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