もやし

マンディンゴのもやしのレビュー・感想・評価

マンディンゴ(1975年製作の映画)
5.0
始まって数分で思ったこと… さっきアイヌ興味ないって書いたのすごく後悔… まあ本当に感じたことだからしょうがないが。


この映画はねえ、ちょっとこれ只事じゃないぞと思ったので見終わって即座にググりました。やっぱり映画史に残る問題作でした。

テーマとしてはアメリカ南部の黒人奴隷制度の時代を描いた作品でしたが、あまりに出来が良いのでまず原作の時点でかなりのヒットを記録していたそうです。
そうなると当然映画化の話が出てくる訳ですが、ハリウッドはまるで乗り気じゃない。内容見てもらえばまあ当然だわなという感じですが。
そしたらイタリアの会社が制作資金出してくれて大作映画の規模で上映。それも大ヒット。だがアメリカでは批評家がこぞって酷評。マスコミにも封殺されて、ビデオテープが発売されるのにもかなりの期間が空いたレベル。

そのまま映画史から消えてなくなりそうになったときにやはり出てくる稀代の映画オタク、クエンティン・タランティーノ。
監督として多大なる評価を受けた彼は、ここぞとばかりに自分の趣味を暴露しまくる。その中で挙げられていたのが、本作。

そこで急に新たな風が吹き、再上映、ディスク、配信販売にまで漕ぎ着けました。そして今や伝説の名作。


どうせいつもの、南部の白人の酷さと黒人の苦しみを描いた映画なんだろ?という方には是非この映画オススメです。こんなに起承転結のあるしっかりとしたストーリーも珍しいし、別に明確に社会派映画でもないんですよね。勝手に見る人がそういうフィルターかけちゃってるだけで。ストーリー上娯楽性のある部分さえもありますしね。


冒頭から台詞の全てが人格否定すぎて現代の差別基準を根こそぎぶっ壊し過ぎてて、ちょっと申し訳ないけど笑ってしまった部分も。(葬式で笑っちゃいけないと思えば思うほどに笑いが止まらなくなるあの感じに近い)

一番印象的なのはキリスト教の話になって、黒人の給仕に、お前に魂はあるか? いえ、黒人に魂なんてものはありませんって会話。なんかやたら印象残ったわ。

主人公の人間性の拗らせ方がこの映画の全てかな。
黒人相手に性欲解消しまくってて、親からお前もそろそろ白人と結婚して孫産めって言われて、破産した貴族の面倒を見ることと引き換えにくれた娘と仕方なく結婚し、初夜に彼女が処女じゃないことを見抜き、愛情を一切注ぎ込む気がなくなって自分の家に戻ってきて妻を何の配慮もなく放置。自分は黒人の絶妙に魅力のある子に惚れ込んで特別待遇で毎日会いに。

黒人を奴隷扱いしない(ように見える)主人公は、白人からは悪い意味で変人扱い、黒人からは良い意味で変人扱い。
だがこの拗らせまくってる男の闇の深さは常人の理解を超えていた……

白人と黒人の関係性を素晴らしいストーリーテリングと過激な演出で描いた名作、でした。
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