いろどり

さらば、わが愛 覇王別姫のいろどりのレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
5.0
90年代にこの映画を見て衝撃を受けた。チャン・イーモウ監督が大好きで中国映画はチャン・イーモウだと思っていたけれど、初めて触れる中国伝統の京劇を通した動乱期の人間模様や圧倒的な芸術性は他に類を見ない傑作で、チェン・カイコー監督を好きになった。改めて観てみて、昔には感じきれなかった感動を味わうことができた。

全体を通してときに妖艶にときに物哀しく漂う色香を紅のヴェールで包むような映像とともに、権力者が変わるごとに手のひらを返す人、それによって淘汰される人を、決して偏らない客観的視点で描ききる力強さに最後まで惹きつけられる。

このような傑作は、数十年に1回くらいしか生まれないと思うし、最近の中国の検閲の厳しさ含めてチェン・カイコーはこれを超える作品はもう作れないような気もする。この映画から10年後に自死を選んだレスリー・チャンも、超えられない壁に苦しんだのだろうか。失われた母への思慕や同性愛、芸術の中でしか生きられない苦しみを、激しく移り変わる中国の歴史とともに美しすぎるほどの映像で包み込んだ傑作。
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