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さらば、わが愛 覇王別姫のniのレビュー・感想・評価

さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)
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これぞ映画だ!と思う、厚みと品と歴史性のある、贅沢な映画体験だった。これを超える体験は、質量としてはそう多くない。
特に、最初の群衆のシーン、練習生の顔、顔、顔!
細部のディテールと迫力をすべてカメラに納め、リアリズムの追求とはこのことかと思った。
覇王別姫の構成になぞらえた、ストーリー構成も見事。これで、映画が終わるのだ、という確信と共にエンドロールとなる、まさに理想的映画体験だった。
私は、中国史に明るい方でないが、京劇というものを通して、中国の戦全戦後史、そして文化大革命を体験することのできるという意味で、歴史性のある豊かな作品だと思った。
陳凱歌は、「黄色い大地」で、検閲を潜り抜けるためにさまざまな工夫を行ったという逸話をいくつも聞いたことがある。
彼の思想というものは、非常にはっきりと感じられる作品ではあるし、その印象が中国現代文化においてはどのような位置を占めるのか、興味が湧くものであるが、やはり、その豊かさ、広大さ、スケールの大きさという意味で、これに肩を並べる作品に、あまり私は出会えていない。
 
リマスター上映で観られて本当に良かった。映画とは映画館で観るものだ。それを痛感させられる映画だった。私も含め、多くの人は、この時代に、デバイス上でこの映画を観終わることはできないだろう。
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