niさんの映画レビュー・感想・評価

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驟雨(1956年製作の映画)

4.5

マンネリ化した夫婦の局面を、都会を舞台に、近所付き合いの煩わしさ、リストラ、生活の苦しさ、夫の病、階級差などの問題とともに描いている。
だが、この驟雨も、「妻よ、薔薇のようなれど」と同じく、コミカルな
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秋津温泉(1962年製作の映画)

4.0

敗戦後の日本で、くっつきもせず離れもしない男女がいて、男の方は結婚し、女たらしで、酒に溺れて退廃めいていて…物語は女の方の死をもって終わる。
私のよくない癖だが、近く観たものと比較してしまう。上記のプ
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害虫(2002年製作の映画)

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塩田監督を観ておこうと思い。
向井秀徳にハマった中学生の頃観たのだが、ストーリーは思っていた通りだった。

監督が有名な著書で述べている、画面の左右の動きや、動線、動きの反転による、鑑賞者の無意識に対
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あのこは貴族(2021年製作の映画)

3.0

始めはとても面白く観た。
東京の階層社会を描いた作品で、「東京は棲み分けされているから、似たような階層の人にしか出会わない」というセリフの通り、交わらない階層同士の邂逅と、それによって華子が自分自身を
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.9

裁判もの。
非常に論理的な検察と弁護士のやり取りには見応えがあり、また、録音された夫婦の喧嘩の扱い方が非常に美味いと思った。
あの喧嘩のシーンは、ものすごく見応えがあったし、緊迫感があり、その音声だけ
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牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件 デジタル・リマスター版(1991年製作の映画)

4.7

外省人の大人たちの不安を感じ取った子どもたちのストーリー。

子供たちのストーリーだが、そこには、60年代の台湾、とりわけ、中国本土からやってきた外省人とよばれる人々のこと、彼らは日本家屋に住み、敗戦
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祇園の姉妹(1936年製作の映画)

4.5

依田義賢脚本。
昭和32年のキネマ旬報別冊に、本作の脚本の掲載があり、依田さんの「『祇園の姉妹』のころ」というコラムが載っている。
依田は29の時、童貞であったと。それで、祇園の加藤楼という屈指の店に
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エレファント(2003年製作の映画)

3.5

非常にショッキングな映画で、体調を崩した。
1999年のコロンバイン高校銃乱射事件を背景に作られた作品。
後ろからのフォローショットを含む長回しによって、加害者被害者の当日の事件直前の動きを見せる。そ
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浮雲(1955年製作の映画)

5.0

成瀬巳喜男の最高傑作の呼び声の高い本作。始まってからの印象は、長く感じる作品で、プロットは直線的で曲がり角も坂道もないなあ、という感じだった。
成瀬巳喜男を観るのは、『乱れる』を観てから二作目だったの
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ローマの休日(1953年製作の映画)

4.0

互いに自分の正体を隠して(王女の方はバレているわけだが)共に過ごす男女。王女は自分がどこに行っても自由がないことを切実に、自分の運命として苦悩しているので、束の間に訪れた幸福であるその「休日」ですら、>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.0

高知県民ホールにて。
カリウスマキ監督の映画は本当に知らなかった。調べてみると、簡潔なストーリーがたくさん出てきて、興味をそそられた。
本作は、とても現代とは思えない。
ラジオに旧時代の携帯電話、ジュ
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自転車泥棒(1948年製作の映画)

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イタリアン・ネオリアリズムに触れる機会があり、その関連で。
生活に根ざしたギミックや、大人のどうしようもなさが子どものあどけないコメディによって強調される点など、小津安二郎監督作品に似たものを感じた。
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マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)

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すごく官能的だった。
それは、特徴的な視線のカットから。
相手を値踏みする視線、困惑する視線、信じようとする視線。感情の動きをセリフではなく、視線によって訴えようとする演出はものすごく引き込まれた。
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Dolls ドールズ(2002年製作の映画)

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冥土の飛脚(劇中の浄瑠璃)と、谷崎の春琴抄がオマージュされている。

とてもよかった。
アート作品のきらいがあると思ったのだけど、思わず感情が昂った。
映画的な脚本上のダイナミズムがあるかはわからない
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HANA-BI(1997年製作の映画)

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滅びの美学、と人が言うものは、北野武の映画で何度も観てきたと思う。
ある種の「どうしようもなさ」みたいなものを物語上の葛藤と捉えるならば、北野の映画は、世の中のルールや抗えなさ、こそその葛藤の対象であ
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ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

アーニーがベッキーにおいで!と言われて、湖に飛び込むのをギルバートが見ているシーンで涙ぐんだ。
不思議なものだけど、あれがクライマックスとして本能的に機能しているのだと思う。

水槽の中のロブスター。
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乱れる(1964年製作の映画)

5.0

言わずと知れた名作で、脚本、映画関連の書籍にもたびたび出てくる作品だが、この歳になるまで観てこなかった。そして、そのことをひどく悔いた。素晴らしい作品だと思った。何度も感情が昂り、打ち震えた。
こんな
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空気人形(2009年製作の映画)

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自由な意思を伴って世界に放たれたダッチワイフが、そもそも男の憧れを投影したものである、というアイロニーが、この映画の狙いなのでしょうか。百歩譲ってそうだとしても、制作者のユートピア観と理想主義が、セー>>続きを読む

ザ・キラー(2023年製作の映画)

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アメリカポストモダン文学的な自己証明の寓話的な物語性を感じた。
ポール・オースターの「幽霊たち」のような。
やっぱり圧倒的画面への制御感。
The Smith好きとしては、主人公がかわいらしかった。
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ippo(2022年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

安藤桃子監督の、高知県帯屋町キネマMにて、龍馬祈願映画祭の、安藤桃子監督と柄本佑監督のトーク企画も含めて鑑賞した。
あまり見た事のないタイプの映画だった。竹中直人監督の映画を昔観た時に感じたものを思い
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PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

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Lou Reedの「Perfect Day」では、
公園でサングリアを飲んで、暗くなったら帰る。と歌われている。

ただそれだけのprefect dayなのだ。それだけが。
そういう美意識は、役所広司
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あの頃ペニー・レインと(2000年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

中学生くらいの時の気持ちを思い出した。
なんでも出来るぞという気持ち。
これからの人生の道のりなどこまでも伸びている感じだ。

だが、あまりにペニーレインが素敵すぎて、映画の内容なんだっけ?となってし
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ケンとカズ(2015年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

妙な言い方だけど、人物の脂汗を感じる映像だと感じた。人の外側ではなく、内側に内在される湿度、服の下の汗、みたいなものを感じる映像だった。

タイトルのケンとカズ、それぞれが抱える葛藤があり、それ故の衝
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さらば、わが愛 覇王別姫(1993年製作の映画)

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これぞ映画だ!と思う、厚みと品と歴史性のある、贅沢な映画体験だった。これを超える体験は、質量としてはそう多くない。
特に、最初の群衆のシーン、練習生の顔、顔、顔!
細部のディテールと迫力をすべてカメラ
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怪物(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

エンドロールで涙が止まらなかった。
ラストシーンのエネルギーは、どうしようもない感動をもたらしたと思う。
脚本の構成も、とても面白いと思った。
演技も結果的には、とても、好みだった。

是枝監督の作品
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ロビンソンの庭(1987年製作の映画)

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子どもの頃に狂ったように、何度もレンタルショップで借りて観た、という知り合いがいる。
むかし、一度dvdで観たが、よく覚えていない。今回は劇場で観た。

たしかに、なるほど、子どもがはまりそうな映画だ
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ドライヴ(2011年製作の映画)

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夜の車道の描写、アクションはとても迫力がある。
マスク、影のクローズアップ、ラストの死んだかと思わせて絶望を誘い、生きているような演出などは、パルムドール的なものなのか?