三隅炎雄

極道の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

極道(1968年製作の映画)
4.0
2作目以降とは作風に溝がある。笑いと暴力との振幅が極端に大きく異様だ。とりわけ激昂した血塗れの若山富三郎がラスボス内田朝雄を罪のない内田の情婦(あるいは若い妻)ともども日本刀で串刺しにして殺す、それも劇画調ではないリアリズムでというのがただ事ではない。あまりに常軌を逸していて、唐突なその暗く生々しい暴力の噴出に血の気が引く。生き残った子分二人が、今に見ていろと高度経済成長社会の転覆めいた呪詛の言葉を吐くラストも不穏だ。
が、それもこれも脚本段階で主人公のキャラクターに石川力夫のイメージが流れ込んでいると知ると色々と納得する。単に愉快な極道ではない。感情の振幅の過剰に恐怖を覚える。ここでは滑稽だけではなく対極にある主人公のむき出しの暴力がジャンルへの批評として盛り込まれている。
殴り込みの前の若山と清川虹子の別れを大真面目に、ちょうど鶴田浩二と藤純子のように情感たっぷりに長回しで撮っているのも面白い。笑っていいのか真面目に見るべきなのか迷う、この演出も2作目以降には見られない。
数々のパロディやくざ映画とも、実録ヤクザ映画とも、『子連れ狼』他若山の激烈な暴力映画諸作とも繋がっていく、これは大変重要な映画だ。
三隅炎雄

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