Ran

すべては海になるのRanのレビュー・感想・評価

すべては海になる(2009年製作の映画)
4.0
何気なくサブスクのアイコンが詰まった画面を立ち上げて、カラカラカラとカーソルを回してふと止めた時に合わさったのがこの映画だった。

いつもだったら、進行がゆっくりだったり、なんともいえない無音の間が多そうな邦画は夜には見たくないなあと避けるのだけど、なぜか今日は気がついたら再生していた。ということで、何の前知識もなく見始めたのだ。

すると出てくるキャストが次々と豪華で驚いた。サトエリ懐かしい!柳楽くん...?柳楽くんだよな!?この歯痒いなんともいえない自然体な演技。柳楽くんよね!?思春期感爆発したビジュアル作りすごい!

吉高ちゃんや要潤、安藤サクラ、広瀬アリス...すごい!

愛を探し、自分を探し、運命を探し、途中で躓いて、でも立ち上がって、道なき道を胸張って歩き始める。そんなドラマや映画って世の中にものすごい溢れてる。

この映画も、正直それでしかなく。
でも、そこに「書店」や「本」がいい味を効かせている。

言葉で稼ぐことを諦め、言葉で勝負する人を、言葉で持ち上げてお金に変える人。

言葉を話せず、万引きを繰り返し、崩壊した過程に奴隷のようにしがみつく人。

言葉を巧みに操り沢山の男に言葉のシャワーをかけてもらっても満たされない主人公。

言葉の取り扱いがまだぎごちなく、言葉の受け取り方もまだ危うい高校生たち。

そしてはじめて言葉と言葉を交わして繋がりを見つけ出す少年。

愛なんて結局映画を最後まで見ても、正しい形はわからないけど、人が人らしく「言葉」というツールで毎日を生きて、人生という海を泳いでるさまを、コツコツとした日常から教えてくれるストーリーだ。

私も、本にはずいぶん救われた。
紙の束にしたためられた言葉は、心を代弁し、未来を想像させ、過去を美しく時には切なく描き出してくれる。それをなぞって読むだけで、言葉を口から出さずとも、自分と対話ができる時間だから。

本や言葉を橋渡しにして日常が進んでいく。自分や相手を思いやり、たぶらかし、期待し、絶望し、抱きしめ、騙して、笑って、泣いて、美しい風景を見る。そんな日々が辛くても楽しくても続いてく。死なずに生きる。それが、愛なのかなあ。
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