"デスカッパ"や"ミカドロイド"で、(ごく一部の層には)おなじみの原口智生監督作品。
B級特撮でコアな人気のある映画監督ですが、本作は比較的一般向け作品だと思います。
人の世が闇を無くし始めた事によって妖怪たちの力が弱まってきた時代。
江戸幕府の命により妖怪討伐が行われ、一部の妖怪は苦肉の策として人間に化け、人間に紛れることで生き永らえてきた。
そんな安政二年、浪人の牙吉はある酒場に流れてくる。
酒場宿でその辺りを牛耳る鬼蔵一味によって、牙吉は賭場に連れてこられる。
賭場での腕前を見込んだ鬼蔵たちは、牙吉に仲間になることを持ちかける、という展開です。
妖怪退治のものの時代劇なのですが、妖怪たちは人に化けていて、妖怪としての姿を見せることは稀です。
妖怪が登場するシーンは良かったのですが、尺の多くは人間同士の会話が続き、結構退屈なものとなっていました。
基本的に画面が暗く、話自体も暗い雰囲気です。
方向性が他の原口智生作品と違うので、同じのようなノリを期待するとがっかりするかもしれません。
"デスカッパ"や"さくや妖怪伝"のような、唐突に歌って踊るMVシーンもないです。
ただ、カッパは本作も登場します。
デスカッパのようなデフォルメされない気味の悪いカッパなので、そのシーンで「ああ原口智生だ」と思い出しました。
妖怪は人を捕食するのですが、シンプルに"妖怪=悪"でもなく、最終的には妖怪と人の戦いが書かれるのですが、プロットがよくてストーリーがしっかりしていると感じました。
ストーリーは良いのですが、終盤、幕府の武士たちおもむろにがマシンガンを携えて妖怪屋敷に殴り込みに来る辺りからおかしくなってきます。
茶髪の今風の兄ちゃんが、銃をもって人をバンバン撃ちまくるので、今まで作り上げた鉄火な空気感が急にGANTZかなにかの世界にワープしたかのような異世界感がしました。
妖怪たちも結局妖怪の姿は現さず、親分は鬼蔵なんて名前しているから、本気出したら鬼に変身して暴れまわるんだろうなと思って見ていたのですが、あっさり撃ち殺されます。
妖怪設定はどこにいったのか。
結構殺陣はいいのと、人死ではスプラッターなシーンも多いです。
また、ストーリーは良かったので好きな人もいると思いますが、人を選ぶと思います。
個人的には、やるならもっとぶっ飛んだ作品にしてほしかったなーと思いました。
やっぱり唐突な歌とダンスが必要なのではないだろうか。