ザシアン

天使のくれた時間のザシアンのレビュー・感想・評価

天使のくれた時間(2000年製作の映画)
5.0
数ある映画の中で私が50回以上観てる作品です。
レビューするには自分には辛く泣けてくるので今までまとめようとしてませんでした。

「素晴らしき哉、人生!」をモチーフにした作品ですがあっちは「自分が居ない世界のほうがいいと思ってたら実際は自分が居なきゃ世の中が回らない!」といった、人生には希望があるという前向きな作品です。


2000年公開の「天使のくれた時間」は少し違います。
「自分が居る世界も居ない世界もそれなりに回ってる。だが自分が誰とどこでどうやって、この世の中を過ごしたいか」を問う作品になっており特に「愛と信頼と誠意」が大事になっています。

金持ちの独身社長のジャックは「天使のくれた時間」がなくても特に不満もなく一生を終えれたでしょう。もしかしたら元カノのケイトとくっつかなくても誰かしらと結婚して家族も作ってたかも知れない。


ネタバレになりますがラストシーン、13年前に別れ今からパリ行きの飛行機に乗るケイトが現実的に考えて飛行機に乗らずに残る選択肢をするかな?それこそファンタジーじゃん!と考えるレビューを見ました。
13年前にはジャックが飛行機に乗ってロンドンに飛び立ち離ればなれになってますし。


しかし皆さんちょっとまってください!!!
13年後のクリスマスイブに会社に伝言を残したのはケイトです。
電話してきた真意は分かりません。だが空港に来たジャックを内心喜んでいたと考えます。
仮にどういう経緯になろうともパリに行く前に会いたかったからこそ電話したんでしょう。

13年の間にお互い恋愛してなかったということはないでしょうし逆に13年間、思い続けていたとしたらもっと早く連絡したら?ともなる。

空港にジャックが来ずパリで幸せに過ごすケイトの人生もあったでしょうし「天使のくれた時間」が無くてもジャックもケイトも別々で幸せな人生を過ごしていたでしょう。

ならばなぜ天使が別の世界を見せたのか?

天使がジャックの「僕はすべてを持ってる」に笑っていました。天使からするとジャックは幸せではあるが愛が無いように見えたのでしょう。

「素晴らしき~」は善意ある行動をしてれば必ず幸せになれるといった作品。
しかし現代では時代が違います。
「天使のくれた時間」は「お金や家族も大事だが何より愛する事の大切さ。そして決して相手を裏切らない信頼性」この2つの大事さを伝えています。


ケイトはショッピングモールでケンカした帰りの車で「幸せならもう手にしてる。最高のサクセスストーリー」とさえ言い放ちます。

更にウォール街に転職しようとするジャックに家で涙目になりながら「重要なのは場所とかじゃない。私はあなたを選ぶ」と言います。
そう、、、ケイトはジャックに無償の愛を伝えているのです。

「天使のくれた時間」の中に入るまでジャックは気づいていませんでした。
誰かを無償で愛すること。お金や環境ではなく誰かから信頼されることの大切さに気づいてなかったのです。

実際にジャックは別世界で浮気しようとするが友達に止められる。身の丈にあってない高いスーツを欲しがる。
「僕は大金持ちになってたのに!!!」とケイトを責める。
更にそもそも妻であるケイトに相談もせずに転職をする。とても身勝手な行為です。


これは現実世界では独身の金持ちで1人の女性に絞る必要もなく、仕事に関しても自己判断で成立していたからでなんでも独断で決めれていた。

しかし別世界では違う。ケイトや子供たちの事を考えながら判断しなきゃならない。安いチョコケーキで我慢しなきゃならない。


ジャックはケイトに愛されることで成長する。愛に目覚めたからこそ元の世界でケイトに会いに行くんです。

仮にですが「天使のくれた時間」がなかったジャックとケイトが付き合っても上手くいかなかったと考えます。

なぜならジャックはケイトからの信頼を失う行動を度々したでしょう。もしかしたら離婚して独り身のただのタイヤの販売員。と思ったら義父の会社なので無職になった可能性もある。そう考えると悲惨です。


私は過去に無償の愛をくれた人を裏切り信頼を失い「あの頃あんなに好きだったのに」という人が今となっては顔も見てくれない、連絡も取れないという経験をしています。

私にも「天使のくれた時間」があれば、、、そう考える人が多いからこの映画にハマるのでしょう。

そう、、、ジャックは幸運にも別世界で後悔しないような行動や反省もできる世界に身を置けたのです。まさしく「天使のくれた時間」なんです!!!((涙))


現実の私たちには「天使のくれた時間」はありません。後悔してる間も年を老います。ジャックは年を取らずにその時間を天使が見せてくれたのです。

一生を大切に生きていくために長く努力ができ幸せを共にする相手を選び幸せにどう生きるかを選択出来る時間。

現実だと毎秒、老けていきます。(悲しい)

だからこそ今を大切に。「本当ならもっと大物になってお金ももっとあるのに!!!」と高尚な人物になっていたという夢と今置かれている現実を受け止めなければならない。

お金や地位じゃなく自分を愛してくれる人を大切にしなければならないんだとこの映画は教えてくれています。

映画 in to the wildで「幸福が現実となるのは、それを誰かと分かちあったときだ。HAPPINESS ONLY REAL WHEN SHARED..」とあります。

幸せとは誰かと共有してこそなんだと改めて気づかせてくれる、それが「天使のくれた時間」なのかも知れません。
ザシアン

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