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天使のくれた時間のisknのレビュー・感想・評価

天使のくれた時間(2000年製作の映画)
4.0
「あの人とそのまま付き合っていれば今どうなっていたのだろう」。誰しもが1度ば考えたことがあるであろうそんな妄想を、映画はクリスマスに起きるひとつの魔法を通じて描く。もし、その世界線に切り替わったとして、私たちは何をし、何を思うのか。

本当の幸せは家庭か仕事か。そんな二項対立を描き、結局は家庭が一番だという、単純な結末に行き着くと勝手に思っていた私を、心地よく裏切ってくれる良作だった。
そして、日頃じぶんが考えている、物語を観る理由についてを象徴的に描いていたので、私はこの作品を強く支持したいと、そう思った。

仕事で圧倒的成功をおさめ、ニューヨークにある金融会社の社長にまで登りつめた男にはしかし、学生時代に今後を約束した恋人がいたが、地元での安定よりも仕事への探求をし、今のポジションにいる。クリスマスの日、心から一緒に過ごしたいと思える人もおらず孤独な主人公だが、コンビニ強盗に対峙したことをきっかけに奇妙な出来事が起こる。

この映画が素晴らしいのは、天使がくれた空想の、もしかしたら妄想ともとれる時間が、主人公の今の本当の生活に影響を及ぼし、その後の彼がとった行動を確実に描いている点だと思う。
物語や空想は、それ自体がたとえ嘘であり存在しないとしても、着実に私たちに影響を与え、そして私たちの行動を変える。


クリスマスの日。外は吹雪だが、空港で話すふたりの姿は暖かい。会っていなかった時間を埋めるのは、信頼しあった二人にはたやすい。エンドロールへと向かう美しいシーンの中で、自分も誰かに会いたくなった。物語の魔法が確実に私にもかかったそんな瞬間だった。
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