バナンザ

天使のくれた時間のバナンザのネタバレレビュー・内容・結末

天使のくれた時間(2000年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ウォールストリートで経済的に成功したジャックは,
ある日朝起きると選び得たであろう、もう一つの人生にいた。そこでは、学生時代に付き合っていた恋人と結婚し二人の子供をもうけ、タイヤの販売員として働く平凡な夫であった。選択し得た現実を垣間見て、ジャックの持っていた価値観が徐々に変わり始める。

アルフレッドヒッチコックは、「映画とは退屈な部分がカットされた人生である」と述べ、
『幸せなひとりぼっち/A man called Ove』では、「人生にはどう生きるかを決める瞬間がある」と述べられているが、まさにその通りだと思った。

原題はThe family manで平凡な夫としてのジャックのことを表している。邦題の天使のくれた時間は、平凡な夫として目覚めてからの時間を表しているので、原題と合致するところがあるで、ストーリーとの祖語は生まないのでたたき台に載せられることはないかもしれない。しかし、映画で登場する黒人を天使として考えている点が、個人的に少し気に入らない。なぜ神の使いとして受胎した神ならイエスのように「神のくれた」にすればいいし、本当に神の使いとしての天使なら、人の目には映らないような設定にもできたはずである。映画の「製作」に携わった日本人が勝手に天使と決めた印象を受ける。

また字幕翻訳技術が映画の面白さを十分に移植することを阻止していると思う。「天使」がお店に宝くじを持って行った際、若いアジア人に話をかけ、銃を使ってまでそのチケットを彼に渡そうとしている。そして、ジャックが宝くじを買い取る交渉を持ちかけるのだが、英和訳がよく適切な意訳であった場合、違った見方ができる。
(ジャックとの交渉が成立し、店を出る際、若いアジア人に言う。)
天使;Ticket was real. You had a chance too.[宝くじは本物。君にもチャンスがあったのに。]
この言葉を聞くと、天使ははじめ若いアジア人にチャンスを上げようとしていた。しかし、受け取らず、ジャックが表れた。ジャックが交渉を持ちかけたとき、天使が背後にあるクリスマスツリーを目を移したことから、特別な日であるから当初の予定とは違くてもいいかと心を決めたのではないかと、想像を膨らますことが出来る。

映画を「元言語」で見る目的は、演者の巧みな音声表現だけでなく、セリフの深い意味を考えて想像力を膨らませることにあると思う。

加えて、繰り返しでてくるセリフにも、日本語訳は違った意訳を採用している。作者が意図して隠したメッセージ性の場合、字幕の段階でそのメッセージ性を殺してしまう。作品は、いろいろな価値観があることを認めながらも幸せとは何かを問うている。個人的な見解だが、作品では、経済的な成功でもなく、住む場所が影響するのでもなく、共にいることを答えとしていると感じた。映画を見終わり、【I choose us】という言葉がとても印象深いと思った。ジャックがロンドンへ向かうとき、ジャックがNYシティの部屋に引っ越そうとするとき、ケイトがパリへ向かおうとするときに、このセリフが登場する。(もしかすると、他にもあるかもしれないが…)二人でいることに意味があるのだというメッセージに感じる。

深読みかもしれないが、天使はケイトにも時間をあたえたのではないかと解釈している。
ジャックがNYシティの部屋に引っ越そうとするとき、ケイトが想い描く家での生活が、明確すぎたからである。天使は一度、学生時代のケイトに働きかけ、ジャックをロンドンに行かせないように促したのではないかと考えると、お店でジャックが交渉を持ちかけた際クリスマスツリーを見たことで、「2回目のチャンスをあげてもいいか」と天使が考えたのかもしれないと想像することが出来る。
When you got on that plane, I was sure it was over. I left the airport afraid I'd never see you again. And then you showed up the very next day. That was a good surprise. You know, I think about the decision you made... maybe I was being naive, but I believed that we would grow old together in this house. That we'd spend holidays here and have our grandchildren come visit us here. I had this image of us, all grey and wrinkly, and me working in the garden and you re-painting the deck. But things change. If you need this, Jack, if you really need this, I will take these kids from a life they love and I'll take myself from the only home we've ever shared together and I'll move wherever you need to go. I'll do that because I love you. I love you, and that's more important to me than our address. I choose us.

この作品の魅力は、言葉とモノが物語を束ねる伏線のように機能していることであると感じた。

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