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灰とダイヤモンドのodyssのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
2.5
【今の目で見ると】

アンジェイ・ワイダ監督の割りに有名な映画ですが、「午前十時の映画祭」でようやく鑑賞。デジタルリマスター版。

現代日本人からすると、やや分かりにくい映画です。
第二次大戦が終わって、ポーランドには平和が戻ってきたはずですが、今後のポーランドの行方をめぐって、またこれまでの国内の様々な勢力が絡んでいて、「ナチス・ドイツが敗北したから万々歳」では済まないからです。

つまり、ポーランドは第二次世界大戦が始まると、半分はナチス・ドイツに、半分はソ連に占領されてしまったわけで、したがって敵はドイツとソ連の両方であるはずなのですが、大戦ではソ連は戦勝国、ドイツは敗戦国ということになったので、ソ連はポーランドにとって目の上のたんこぶ、どころか事実上の管理職みたいな国家であり続けているからです。

ポーランド国内ではそういう状勢なので、一方で純粋な独立を図る立場があり、他方ではソ連のいいなりになって国家再建を行おうという立場がある。言うまでもなく後者のほうが主流派です。

この映画は、その辺を土台にしているけれど、名指して共産党やソ連を批判する場面はほとんどありません。

実際、そんなふうにこの映画を作ったら、検閲を通らなかったでしょう。しかし直接名指さずとも、この映画ができたばかりの頃は、これを鑑賞したポーランド人には何のことかすぐに腑に落ちたはず。

そのあたりはまあ分かるのですが、それは別にしても、共産党に従順な大物を狙う暗殺者の青年と、ホテルのバーに勤める若い女の関係が長すぎて、バランスを欠いているのがどうも。女優自体は魅力的なのですけれど、この映画の肝心なところはそこじゃないはずなので。
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