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ツリー・オブ・ライフの教授のレビュー・感想・評価

ツリー・オブ・ライフ(2011年製作の映画)
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「愛」とか「命」とか「家族」とか「神」とか「自然」とか。
「生」とか「死」とかはすべて観念で。
実存というものがあって観念というものも確固として存在している。
それをドラマとしてではなく、観念を視覚化する、映し出す、というのが映画だろうが!
と、叩きつけてくる感じ。

観念の源、という意味で前半は、地球とか命の起源とかキューブリックの「2001年宇宙の旅」的に飛躍していく。
「2001年」と違うところはある家族のひとつの「死」から始まるところ。

それと本編とはまるで関係なくショーン・ペンの佇まいの美しさは、もうそれだけで「ええもん見たで」という気になるし、ブラッド・ピットの好演だったり、ジェシカ・チャステインのお母さんの愛らしさ。
そう言った演技面や俳優たちの視覚的美しさも実は際立っていて、ストーリーの難解さ(?)なんて気にならないエンタメ性を誇っている。
これがテレンス・マリック力というものか?

そして。ストーリーを追えば追うほど、掴みかけたところで突き放される。
父も母も愛に溢れてはいる。
どちらにも暖かな優しい眼差しも浮かべているが、しかし、一方で暖かみがなく、教条的でもある。ある種崇高な価値観の持ち主であるが故に、愛が強くてもとても禍々しくもある。
子供たちにとっても、その崇高な精神の両方が理解できるわけもなく。
また、それらによって人格が築かれもするし。反発もするし、窮屈だ。
このような世界で生きてきたが故の芸術的で繊細な感性と、そんなに生きづらくさせられた、という両方の気持ちがテレンス・マリックにあるのだろう。

何か許せないという永久的に続く苦しみと、許して楽になりたいという葛藤のイメージに2時間半付き合わされる。
それに回答はない。

ただ一緒になって、誰も悪くはないのに、どうしてこんなにも大切な人を大切にできないんだろう。
愛し愛されているのに、こんなにも傷ついてしまうんだろう、とやるせない気持ちになるだけ、の映画。
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