千年女優

たそがれ清兵衛の千年女優のレビュー・感想・評価

たそがれ清兵衛(2002年製作の映画)
4.0
幕末。海坂藩の御蔵役を担う下級武士で、認知症患う母や幼い娘達を養いながら病気で亡くなった妻の治療で作った借金返済のためあくせく働く姿を「たそがれ」と揶揄される井口清兵衛。再会した幼馴染の朋江を救ったことで剣の腕が知れ渡った彼が、お家騒動で負けた旧体制の剣客・余吾善右衛門の討手を命ぜられる様を描いた時代劇です。

監督として『男はつらいよ』、脚本として『釣りバカ日誌』とふたつの長編映画シリーズに携わるなど日本映画界を支えた山田洋次が、江戸時代の下級武士を主人公にする藤沢周平作の時代小説を映画化した三部作の第一弾で、真田広之を主演にした物語で国内の映画賞を席捲すると本家アカデミー賞でも外国語映画賞にノミネートされました。

お話自体は定型的とも言える落ちぶれた武士の物語ながら、江戸末期の武士の時代の終わりと映画界において失われつつある時代劇というふたつの「たそがれ」が呼応する事で本作独自のグルーブを起こしています。それを確かな技術を受け継いだ真田広之が流石の存在感で表現していて、田中泯演じる善右衛門との対比が哀愁を呼ぶ一作です。
千年女優

千年女優