剣々

春秋一刀流の剣々のレビュー・感想・評価

春秋一刀流(1939年製作の映画)
4.0
逃れられぬ運命の中で

千葉道場を破門となった平手造酒は、用心棒家業に身を費やしていた
偶然出会った同門の只木巌流、多聞重兵衛ともども働き口を探していると、縁あって笹川の繁蔵の用心棒に雇われることに
その腕を振るう平手達だったが、「天保水滸伝」として知られる博徒同士の抗争に巻き込まれる…

丸根賛太郎の監督第一回作品
古い作品なだけあって画質、音質には結構な難ありです
殺陣に効果音がないのも寂しい
それでもカメラワークやカット割と目を引くものが詰まっており十分に楽しめますね

冒頭軽快な音楽と共に現れる
このいいお天気に
建師ヶ原に雨が降る
血の雨が降る!
の文字からグッと興味を惹かれましたね
そして対峙する2勢力の戦いの火蓋が切って落とされます
いきなり大立ち回りかと思いきや、始まるのは平手達の呑気な会話でちょっと肩透かし笑

序盤中盤と愉快さや恋路に友情と人間模様が繰り広げられます
皮肉屋な平手の毒舌混じりの話術も面白いです
命を惜しまぬ用心棒が、怪我をして恋をして命を失う怖さを知り真っ当な道を模索したりとドラマ性ある展開が興味深いですね
中盤から終盤にかけて訪れるのは人生の儚さ
平手には病魔が忍び寄り、動けぬ彼のもとに届くは仲間の訃報
儚く散りゆく命をまざまざと見せつけられます

そして迎える最後の大喧嘩!ここで冒頭に繋がるんですよ!
圧倒的な負け戦に、繁蔵親分は子分達に俺のために死んでくれと檄を飛ばします
呼応する子分達!
それを知り病床を飛び起き、病気の身体に鞭打ち駆け出した平手
凄まじい形相で鬼神の如く剣を振るう姿
仲間との絆に胸打たれ、自然と涙が溢れました
昔の時代劇観てここまで泣くとは思わなかった
ほんと素晴らしい!!このラストだけでも満足度ぐんとあがりました


己が運命に抗い飲まれていった男達の物語でした
終盤ビックリするくらい感動しました
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