みおこし

家族の肖像のみおこしのレビュー・感想・評価

家族の肖像(1974年製作の映画)
3.4
ローマにあるアパルトマンで絵画の収集と研究に励む"教授”はひそやかな生活を送っていたが、知り合いの貴婦人ビアンカの頼みに根負けして彼の部屋の上階を彼女の知人に貸すことになる。その知人というのはコンラッドという若者で、過激な左翼思想に駆られているものの芸術への才気あふれる彼に少しずつ興味を抱くようになり…。

巨匠ルキノ・ヴィスコンティの晩年の名作。世界的スターのバート・ランカスターが教授に扮し、妖艶な美青年コンラッドを演じるのはヴィスコンティ映画に欠かせない俳優ヘルムート・バーガー。
病に倒れた監督の負担を軽減させるということもあり、全てのシーンが教授のアパルトマンで撮影されたという本作。閉鎖的な空間で静かに生きている壮年期の男性が、自分とは価値観が180度異なる若者たちとの奇妙な生活を通して、新たな自我に目覚めていく物語は、まさにヴィスコンティの映画人生の集大成ならではの内容。どこか教授に自らを重ねる部分もあったのかなと推察します。

深いテーマがあるということは分かりつつも、教授の平和だった生活をぶち壊しまくる若者たちの乱痴気騒ぎには思わずイライラ(笑)。パーティーをするわ、泥酔をするわ、もうあんな人たちが上階に住んでる生活なんて考えられない!!特にリエッタちゃん、うるさすぎ!(笑)
でも、自分とは異質のものに図らずも興味を抱いてしまう…という部分、どこか分かる気がします。教授の人生において本来は会うはずがなかったコンラッド。そんな彼に次第に魅せられていく教授の悲哀を抑えた演技で表現したランカスターの演技が素晴らしかったです。
そしてヘルムート・バーガーの麗しさと言ったらもう…。『地獄に堕ちた勇者ども』でもすごく素敵だったけれど、本作でも彼のミステリアスな美しさ炸裂でした。
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