Jeffrey

ぼくは歩いてゆくのJeffreyのレビュー・感想・評価

ぼくは歩いてゆく(1998年製作の映画)
3.5
‪「ぼくは歩いてゆく」

‪冒頭、9歳の少年ファルバード。

出生届、戸籍、学校に通えない、働き口、家計、役所、仕事を求めて町中を歩き回る。警察署、隣の女の子、タイプ打ち、父の堕落。今、身分証明書を持たない少年の葛藤が映される…

本作はアボルファズル・ジャリリが1998年にサンセバスチャン国際映画祭審査員賞を受賞したのを皮切りに、絶賛されたドキュメンタリータッチの映画で、多分彼の作品の中でも1番人気があるものだと思う。

話は監督が息子の父親になぜ戸籍を取らなかったかと質問をするのから物語が始まる。

イラン革命の前から薬に手をつけていることが明らかになる父親、麻薬中毒と言う事で親失格とされ、子供を政府にとられてしまう。

次の瞬間子供が大人に手を引っ張られ歩く描写へ、画面は静止画になり、キャスト一覧が表示される。そして水に揺れる家族写真のショット、少年が必死で洗車をしている描写、続いて姉への質問に変り、家族構成を聞かれる。

そこで姉は手紙を書き独白する。"なぜ父さんは大学へ行ってくれる事を望むと言っていたのに今では学校へ行くなと言うの…励ましはどこへ行ったの?父さんがそう言うなら私は我慢します"と口にする。

続いて母親が職員に質問される。
そして街を歩く未成年の少年たちに質問をし、様々な少年の顔がスクリーンに映し出される。ファルバードは施設に連れていかれてしまい、そこで一夜を過ごす。

そして少年は職を見つけ様とするも、年齢制限により厳しく結局働けなかった。

そして姉も新聞広告を見て電話で仕事を求めるも年齢を伝えると却下されてしまう…だがお金は一刻も必要だ。本作のワンシーンで少年がとある雑貨店で雇ってくれとそこの店主に話すのだが、イラン人かと聞かれそうだと答えても信用してくれず、身分証明書を持ってきて、そうしたら確認できる。そして雇ってやると言われ少年は身分証明書を持っていって提示するのだが、

結局15日後に来てくれといわれるが少年はあなたは僕の事をアフガン人と言ったが、身分証にはイラン人となっているよね…と言い、持ってきたら雇ってくれると言ったよねと何度も繰り返し述べる場面が凄く印象的だった。

彼らの文化の中に言ったものに対して、それを行動に移さないと、しつこい位に繰り返しその話をするなと思った。結局監督は少年にその身分証明書は他人のものでは無いのかと攻めより、結局嘘だったことがわかり、その翌日他人の身分証明書の母親がそのお店に行き、店長に事実を伝え次のショットでは少年が厳しく叱られ号泣している画を見ると、容赦ないほど意地悪な場面だなと思った。

キアロスタミの作品を見てもそうだが、イラン映画の特徴の1つに少年たちにフォーカスして、家族構成や仕事、学校、友達や何から何まで質問して彼らの本心を聞き出そうとする。

それを思いっきりやり遂げたのが「ホームワーク」だ。こういったリアルな子供社会を映し出せる国はそう多くないと思う。

本作は一瞬日本のサッカーアニメ「キャプテン翼」が流れる。

いやほんとに中東って子供にとっては住みにくい環境だなと思う。絶対的権力を持つ大人が子供の行動を牛耳り制御する…。

ことごとく少年のやりたい事は却下される。

さて、物語は両親が出生届けを出さない結果、戸籍も身分証も無い少年を軸に、学校にも行けず、仕事にもつけず、それでも家計を助けるべく、働きたいファルハードは仕事を求めて、街中を歩き回り、また身分証を取得する為、たった1人で役所へ出向き、真っ当な仕事を手に入れる事ができる日を、いつか学校で勉強できる日を夢見て彼は歩く…。‬

‪余談だが、監督と少年の出会いからこの物語は生まれたが、彼が正式な名前で身分証明書を取得できるまでの実体験を描いた秀作だと思う。オススメです…‬
Jeffrey

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