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THIS IS ELVISのtubure400のレビュー・感想・評価

THIS IS ELVIS(1981年製作の映画)
4.0
エミネムのせいか晩年のエルヴィスのことを、ベガスで太って心臓を悪くして急逝した、みっともないロックンローラーの象徴のように思っていたけれども、『晩年のエルヴィス』はProtomartyrとか、Nick Caveの曲のテーマになっていることもあって、特にこの映画はNick Caveのおすすめだったので観てみた。

前半の、兵役あたりまでのエルヴィスはめちゃくちゃ不遜で格好良くて、『土竜の唄』(自体は全然好きじゃないけど)のパピヨンとか、ジャスティン・ビーバー君とか、XXXtentationのことを思い出す。ただ、基本的には生真面目で、まともそうなというか、思った以上に人間らしいところにも驚かされる。

ただ、Elton Johnみたいな雰囲気になった晩年のエルヴィスにも、なんとなくグロテスクな魅力がある。死の6週間前のライブの心身ともにバランスを崩した曲間の語りとか、ダラダラと汗と涙を流すその姿は、ものすごい映像だ。最早虚構そのものになってしまった中で、消え残る人間らしさが助けを求めているような奇妙さ。引きつった笑顔に昔のエルヴィスの表情が埋没しているような不気味さ。ドキュメンタリーは所詮映画ではないとは思うけれども、これはドキュメンタリーならではの凄みがあって、良かった。
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