上海十月

復讐するは我にありの上海十月のレビュー・感想・評価

復讐するは我にあり(1979年製作の映画)
5.0
2021年新春に佐木隆三の原作本を初めて読む。映画は何回も観ていたが原作を読んだのは、初めてで直木賞を取っているがルポルタージュのような小説で榎津巌の周辺を取材して後半に取調べで本意を語る形式で映画のような縦横無尽な時系列ではない。ある意味本作は、自由だ。あとがきに今村昌平の調査魔ぶりのエピソードがあり佐木隆三以上であったため新たな事実が出て映画に反映されている。今村昌平が拘ったのはやはり土俗的な宗教で歌オラショ(隠れキリシタンが伝承で歌った歌)が榎津巌が鼻歌で歌い、三國連太郎演じる父親が歌いながら骨壺投げる。歌オラショの説明はないが印象的で効果的だ。本作の第一稿を書いたのは大河ドラマ「麒麟がくる」の池端俊作であった。この原作をまとめるのは大変だったろう。佐木隆三自身も宿屋の客で出て笑える。
2016年の感想。今村昌平生誕90年ということで放映。夜11時ごろから見始めたが何回も観ているので途中打ち切って明日また続きを観ようと思って観ていたら、もうやめられなくなってしまう、この迫力。まさに重喜劇。観て、群衆シーンが効果を上げている。オープニングのマスコミに追われながら警察に入るシーン。専売公社二人殺害の時の警察とマスコミ、ヘリと今村作品としては、大作感がある。池袋に浜松の旅館の女将を呼んで映画を観て出てくるときの人込みと、どれをとっても見事だ。そして複雑に絡む各々の愛憎劇。ミヤコ蝶々、清川虹子と2大喜劇女優が非常にシリアスな演技する。清川虹子の前で北村和夫が小川真由美を襲うところは、唸らざるを得ない。三国、倍賞の絡みもすごいし、とにかく偽善社会を連続殺人犯を使って描くという日本人論にしようとしている。間違いなく傑作。
上海十月

上海十月