まちゃん

美女と液体人間のまちゃんのレビュー・感想・評価

美女と液体人間(1958年製作の映画)
3.2
タイトルに魅かれて観始めたのだが刑事ドラマが始まってので戸惑った。オープニングの核爆発のシーンや衣服を残して消える人間、科学者の登場など普通の刑事ドラマとは違う部分も見え隠れするのだが序盤は全面には出てこない。ただ失踪した麻薬の密売人、美しいキャバレーの歌手、ギャングと魅力的な道具立てがあり日本流フィルムノワールとして楽しめる。また物語の舞台となる背景も興味深い。華やかなキャバレーと発展途上の東京の街。二つの対称的な風景は教科書には載っていないリアルな昭和の空気を伝えてくれる。物語は後半に差し掛かりいよいよ液体人間のシーンが多くなってくる。特に無人の第二竜神丸のシーンは秀逸だ。薄暗い船内で緑に浮かび上がる液体人間の姿は不気味で怪奇映画の魅力がある。ガマを使った実験も恐ろしく雰囲気を盛り上げる。それにしても核実験の影響で液状の怪物になるというのは恐ろしい。第五福竜丸の悲劇の記憶も生々しい時代、液状の怪物が忍び寄る様は当時の人々が感じた恐怖を表しているようだった。後のウルトラQへの萌芽も感じさせて一見の価値のある作品だ。
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